西海区水産研究所機関評価会議概要報告

1 会議の概要
2 研究課題の評価結果
3 16年度指摘事項等のフォローアップ状況
4 17年度指摘事項等
5 その他


1 会議の概要

開催日時: 平成18年3月7日13:15〜17:00
開催場所: 西海区水産研究所大会議室
出 席 者: 外部委員
  中田英昭(長崎大学水産学部長)
  古賀吾一(鹿児島県水産技術開発センター所長)
  伏見克彦(長崎海洋気象台長)
  岸川康幸((株)長崎魚市企画部長)
  〔三好達夫(NHK長崎放送局長):欠席、資料による審議〕
西海区水産研究所
  所長、企画連絡室長、東シナ海漁業資源部長、東シナ海海洋環境部長、海区水産業研究部
  長、石垣支所長、総務課長、〔陽光丸船長:航海中のため、欠席〕
  《事務局》企画連絡科長、情報係長

2 研究課題の評価結果(年度計画第2の1の小課題のS・A・B・Cの個数を記載)

  S   2個
  A  27個
  B   1個
  C   0個

3 16年度指摘事項等のフォローアップ状況
(1)外部委員の主な意見
大項目 中項目 事項  外部評価委員の主な意見 対応方針と実施状況
1業務運営の効率化に関する目標を達成するため取るべき措置
1評価・点検の実施
調査・研究の評価
5年間の中期計画の最終年度。これまでの集大成として、総体的な研究のまとめと結果報告が期待される。  これまで研究成果の取りまとめと発表に取り組んできた。平成17年度については査読付き論文を35編発表した。
2競争的環境の醸成
外部資金の獲得
競争的資金の積極的な活用については,都道府県機関も非常に関心の高い課題である。獲得のノウハウに関する勉強会の開催等を検討してほしい。 競争的資金について県の試験研究機関と協同で獲得している課題もある。西海ブロック推進会議および同部会において科研費や農水省高度化事業等の応募の際に、科学技術基本計画の重点研究分野について情報提供を行っている。要望が有れば情報交換会を開催していく。
評価結果の反映
所の裁量経費で経常的なプロジェクトとは別に緊急性や重点化すべき研究を奨励することは重要と考える。 所として重点的に取り組むべきと判断される課題については、今後も裁量的経費による研究を継続していきたい。
4調査研究の連携と協力の推進
他機関との連携
中期目標等の達成に向け,他の研究機関との連携や必要な資金の獲得に努められ,研究業務が順調に進捗し、成果があがっている。この方向をさらに発展させ、独創的かつ国民のニーズに一層答える成果を期待する。 今後も地域のニーズの把握に努め、これに対応する技術開発研究を進めていく。このため、外部資金の獲得に努めていく。
地元との関係を密にするため、地道な取り組みや業務運営は評価できる。 長崎大学及び長崎県総合水試と連携した研究の取り組みや、長崎さかな祭りに連動した施設の一般開放、さらに魚市場関係業者との意見交換会等地元との関係を密接にすることは勿論、地域の水産関係機関との連携強化に努めていく。
6職員の資質向上
人材の育成 人材の育成についても博士号の取得に力を入れようとしており、人材こそ研究機関の生命線という姿勢がうかがわれる。 人材の育成は研究組織にとって重要な問題であり、研究者の学位取得の奨励や学会活動の支援をしていく。
教育面での大学(とくに長崎大学)との連携も、これからの人材育成の点から重要な課題と考える。連携大学院のスタッフの充実や、社会人入学制度などを活用した職員の学位取得の奨励など、長崎大学とぜひ連携を深めてほしいところである。 連携大学院については長崎大学に6名の教官を派遣してきた。18年度も今年度と同様に協力していく考えである。また、社会人入学制度により、職員2名が長崎大学大学院、東京海洋大学大学院に入学している。他にも学位取得を意識している研究員の支援をしていく。
2国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するために取るべき措置

1試験及び研究、調査並びに技術の開発
研究内容等に関する意見等
地球環境問題に繋がる漁業再生へ向けて研究は長期の視点で粘り強く調査研究を重ねてもらいたい。 地球温暖化に伴う海洋環境や水産生物への影響評価に関する生物モニタリングを継続することは重要であると認識している。有明海においては貧酸素水塊や赤潮の観測システムの充実を関係する試験研究機関と連携して進める。
次期中期計画の検討・作成の年と伺ったが、ぜひ、社会的に貢献できる研究にこれまで以上に力点をおいていただきたい。 次期中期計画においても、独立行政法人水産総合研究センターの役割が十二分に発揮できるよう中期目標の達成を進める中で研究技術に関するニーズの把握と成果の還元に努めていく。
西海区水産研究所の活動実績については詳細に説明を受けたが、水産総合研究センター全体の中で、その実績がどのような位置づけになっているのか、どこに西海区の特色があるのか(あるいは特色を出せるのか)など、よく分からない。このような視点を持つことは、西海区水産研究所として独自の研究や事業を今後展開していくための最適戦略を練り上げる上で非常に重要であるように思う。 水産総合研究センターを構成する一組織として、当所の果たすべき任務をもっと明確に説明できるよう努めたい。なお、当所は事務分掌により「東シナ海域」における資源、環境、増殖に関する調査研究を実施することとされており、黒潮・対馬海流の源流域である東シナ海およびそれに接続する有明海・八代海などの半閉鎖性水域を対象とした試験研究に主体的に取り組む。併せて環東シナ海の中国、韓国さらには石垣支所と同様の環境を有する熱帯海域の国々との共同研究をこれまで以上に積極的に展開していく所存である。
4成果の公表、普及、利活用の促進
成果の公表と利活用
国研たるべき西海区水研が分担・推進すべき重点課題を打ち出すなど、研究の取り組みが国民により良くわかるよう取り組んでいただきたい。報道発表等、成果や取り組みについてのわかりやすい発表・国民への還元に一層努めていただきたい。 水産総合研究センターの広報誌であるFRAニュース、おさかな瓦版、おさかな通信(メールマガジン)を通して、一般市民に対しても成果を広く発表した。また、西海区水研としても独自の広報活動により漁業者や市民への成果の広報に努めている。
「おさかな瓦版」は良い方法なので、発行部数を増やして、もっと水産研究所をアピールして頂きたい。 「おさかな瓦版」は水産総合研究センターで毎回6000部発行している。必要があれば部数を増加することが可能である。一方、これまで西海区水産研究所ニュースを年2回発行していたが、17年度からは調査研究情報「西海」を年間に4回発行していく方針で、これにより調査研究活動を広く一般市民に広報していく。

(2)改善方策
大項目 中項目 事項 改善を要する問題点等 すでにとった措置 今後検討するもの
他機関との連携の推進
東シナ海・黄海域で国際的な連携研究を組織的に展開することがこれから重要である。漁業資源の管理だけでなく、沿岸域を含めた環境管理についても、国際的な取り組みが必要である。 東シナ海・黄海での漁業資源や海洋環境研究に関する日中韓3国の国際的な調査研究の取り組みを進めるため、水研センターは韓国(国立水産科学院)、中国(水産科学院)とMOUを締結した 。 当所ではこのMOUに基づき資源生態や管理手法に関する共同研究に積極的に取り組むこととし、平成18年度の国際交流経費の予算を申請している。また、水産にとって望ましい海洋環境とは何かについて、西海ブロック水産業関係試験研究推進会議を通して水試等と研究を開始することとした。
研究内容に関する意見等
研究所として共通の目標課題を持ちそれを達成するために各研究分野相互の連携も含めた基本戦略を明確にすることが、これから必要になるのではないか。 次期中期計画の策定において、西海水研として3大達成目標を設定し、それを遂行するため、各部において中長期的研究開発方針を作成した。 この中で部・支所間での連携協力を明確にし、かつ外部機関とも共同研究の展開など連携・協力関係を構築し、試験研究の効率的な運営を図っていくことにしている。

4 17年度指摘事項等
(1)外部評価委員の主な意見と対応方針等
大項目 中項目 事項   外部評価委員の主な意見 対応方針と実施状況
1業務運営の効率化に関する目標を達成するため取るべき措置
組織改正
石垣支所と八重山栽培漁業センターが統合されるが、課題に総合的、効率的に取り組める体制ができるものと期待している。 石垣支所と八重山栽培漁業センターとの統合を機に、研究開発成果を地域水産業へ貢献できるよう一層努めていく。本年4月からさっそく亜熱帯・熱帯特産種で近年漁獲量が低迷しているシロクラベラ(地方名マクブ)の資源回復・漁獲量増大を目指し、種苗生産、生態、放流効果等、一貫した調査をオール石垣支所でプロジェクト研究として取り組むこととしている。
1評価・点検の実施
研究成果に関すること
中課題について目標達成は十分であり、研究成果が確実に認められる。特に、マアジ及びイセエビの資源解析の基礎研究につきましては、特筆するものがあり、今後のさらなる解明が期待される。 東シナ海の漁業資源、海洋環境及び沿岸の藻場・磯根資源等に関する研究等、地域に関わる研究を進めている。これからも西海ブロックの研究ニーズの把握に努め、水産業の振興に貢献できるよう技術開発研究をさらに進めていく。
2競争的環境の醸成

競争的資金の獲得
競争的資金の獲得がますます重要になっており、研究費申請のリーダーシップの体制を強化することが必要のように感じていたが、18年度には、「プロ研対策チーム」を組織するという構想のようで、それが実効性のあるものになることを期待したい。 非特定独立行政法人化を控え、競争的資金の獲得がますます重要になっているという認識であり、更なる競争的資金の獲得のため研究コーディネーター等からなる「プロ研対策チーム」を組織することとなり、より多くの競争的資金の獲得に向け努力する。
4調査研究の連携と協力の推進

他機関との連携
各研究機関の連携・協力は不可欠であり、これまで以上に推進して欲しい。また、コーディネイト役としても活躍して欲しい。 水試・大学等との連携・協力は、水研センター運営の重要な柱と考えており、コーディネイト等についても力を入れていきたい。
2国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するために取るべき措置

1試験及び研究、調査並びに技術の開発

研究内容等に関する意見
限られた予算や人材で、業務運営は難しいこともあるかと思うが、水研独自の研究と地域との結びつきにより水産基本法理念の目標を達成して頂きたい。 水産基本法理念の目標を達成するためにも地元との関係を密接にすることは勿論、地域の水試等関係機関と役割分担を明確にしつつ連携強化に取り組むよう努めていく。
中長期の目標設定や対応方針や課題が羅列的・平面的である。各部間の連携の内容や設定目標と課題とのつながり、課題解決のプロセスや戦略などを示して頂きたい。継続して取り組むべき基盤研究と緊急性の高い臨時の課題との仕分けも必要かも知れない。 次期中期計画の策定において、西海水研として3大達成目標を設定し、それを遂行するため、各部において中長期的研究開発方針を作成した。これを基にさらに部・支所間での連携協力を明確にし、かつ外部機関とも共同研究の展開など連携・協力関係を構築し、試験研究の効率的な運営を図っていくことにしている。
4成果の公表、普及、利活用の促進
成果の公表・利活用
報道発表等、成果や取り組みについてのわかりやすい発表・国民への還元に一層務めること。 研究成果や取り組みを国民に対して適宜公表することは水研センターの責務と考えている。メディアの活用等についても検討し研究内容をできるだけかみ砕き分かり易くできるようさらに改良したい。
NHK長崎放送局には外部の様々な分野で活躍している人と情報・意見交換を定期的に行う「番組談話室」がある。このような場所を利用するなどして積極的に情報を売り込んで行く等広報機能の強化をお願いする。 TV,新聞など広報内容に適したメディアを利用させていただき、積極的に広報活動できるよう広報機能の強化に努めたい。

(2) 評価結果の反映方法(すでにとられた措置と今後予定している措置に分けて記載)
大項目 中項目 事項 改善を要する問題点等 すでにとった措置 今後検討するもの
B評価の課題
「底魚魚類相の分布構造解析と重要底魚類の着底・生育場の把握」で、今後の研究展開に有用な成果が上がったが、研究の焦点が絞り込めていない。 予算規模に見合った、課題内容の絞り込みを心がけることとした。
成果の公表 広報の充実は急務であり、対象毎に内容を工夫するなどして、積極的にインターネットやメディアを活用してさらに進めて欲しい。 西海水研では研究者以外の漁業者や地域の住民を対象として調査研究情報「西海」、研究成果情報やホームページ等を通じて広報に努めている。 よりわかりやすい親しみのある内容となるようさらに努力していきたい。配布先等についてもさらに検討を加えたい。
※B又はC評価となったものを中心に(B、C以外でも)、自ら改善すべきと考える事項について記載。

5 その他(所感、問題点等)

  (所感)

  1. 県においては三位一体による財政の確立のため、調査研究予算や定員削減が求められており、外部資金の獲得が一層重要になっている。このため競争的資金の獲得に向け水産研究所の指導が求められている。ブロック内の県水産試験場等と連携・協力して取り組みを強化することが必要であることをあらためて認識したので、その具体策を検討することとする。
  2. 当所には地域の水産研究機関の核となるよう基礎的・基盤的研究の一層の充実が評価委員からも出されている。大学、県水試等との協力と分担を進め、地域の水産業振興のため柔軟な体制で望めるようにする必要がある。
  3. 評価委員からも指摘されたが、西水研の活動を漁業関係者だけでなく、一般市民にも理解されるよう各種の広報活動の充実を図る必要がある。

  (問題点)

  1. 機関評価会議において当所の1年間の活動について詳細な資料を作成し、評価委員に説明を行っている。これらの資料の作成は、所の一年間の活動を整理ために重要な作業である。しかし、資料が膨大なため実質3時間程度の会議でその全てを理解していただけるよう説明することは困難である。このため、評価委員へは事前に資料を送付しているが、その全てに目を通して理解するのは困難と思われるので、次年度については用いる資料の簡略化を図る。具体的には評価会議で意見等を求める、あるいは議論されるような事項に絞り込むなど吟味することとする。

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