本種の成長は極めてよく,仙台湾のキアンコウの体長の増加は2月から6月までの期間に最も大きく,その後の7月から10月までの期間には極めて小さい。11月以降の成長は再びよくなる(2月ごろ体長約17cmのものは,翌1月には40cm前後に達する)。この体長増加にみられる成長状態の季節的変化は,空胃個体出現率の季節的変化に対応しているといわれる(小坂1966)。

本種の産卵期は2〜6(盛期は3〜4)月である。仔魚の出現期は,本州中部以南の沿岸および沖合で3〜6月,北海道近海で6〜7月であることから産卵期は南に早く,北に遅いと考えられる。
雌の最小成熟体長は50cm以上で,体長57〜58cm以上からほとんどが成熟する。雄の最小成熟体長は約35cmである。
卵巣は片側だけが発達しており,卵は長さ3〜5m,幅25〜50cm前後の薄い帯状の被膜に被われている。卵径は1.3mmで,1個の黄色油球径は0.33mmである。この卵帯は浮性で海の表層に浮いている。

全長4.5〜4.9mm(ふ化後2〜3日)の仔魚の卵黄はかなり吸収されており,口も開いている。腹鰭も大きい。黒色素胞は頭部,消化管上および卵黄上に密に分布する。また,尾部には一部膜鰭内へも広がる明瞭な3個の叢がみられる。腹鰭の先端は黒い。筋節数は7+24〜25=31〜32。

全長5.75〜6.05mmでは,卵黄および油球を完全に吸収し尽している。背鰭は後頭部背面に2棘あり,前棘は長くて先端は黒い。後棘は短くて素胞を欠く。腹鰭は頭部下面にあって長く,その上に2個の黒色横帯がある。胸鰭にも鰭条が現われはじめる。筋節数は4+27=31。
全長10mmごろには,背面の延長背鰭条は4本に,腹鰭条は5本に増加する。また,体の中央部には対在して背・臀鰭条原基が出現し,尾鰭の形成も始まる。
 


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