本種の産卵期は4〜6月で,産卵は主に沿岸の河口付近で行われる。 最小成熟体長は雌で全長20cm,雄で約14cmと考えられており,雌で22〜23cm前後に達したものはほとんど産卵に加わるものと考えられる。

卵は径0.85〜0.90mmの球形沈性粘着卵で,無数の小油球からなる1油球群(群の径は卵径の1/2〜2/3)がある。卵膜は粘着物で被われ,表面にはちりめん状のしわがある。卵黄は無色透明で,油球群は淡乳白色を呈する。
受精卵は水温19.8〜20.9℃の止水飼育で,約160時間でふ化する。また,授精後流水飼育(水温18.7〜19.8℃)では約130時間でふ化がみられる。
ふ化直後の仔魚は全長2.2〜2.25mm,筋節数は9+14=23または8+14〜15=22〜23。肛門は第8〜9筋節下に開く。仔魚膜鰭は幅狭く,顆粒状構造が見られる。樹枝状黒色素胞は肛門上方から第14筋節付近に至る尾部腹面および体側中央部にみられる。この肛門後方尾部腹面の黒色素胞叢はよく発達し,ふ化直後の本種仔魚の特徴となる。黒色素胞のある部分および胴部体側に橙色素胞がみられる。
全長2.7〜2.85mmでは黒色素胞は眼前部,鰓蓋項肩部,胸鰭基底,腹部,肛門後方の尾部腹面から体側にかけて発達する。これらの黒色素胞のある部分および頭部から胴部体側に橙色素胞がよく 発達する。特に,胸鰭基部のそれは顕著である。

全長5.4mmでは体高が高くなる。黒色素胞は胸鰭,背鰭,臀鰭基底部に散在する。鼻孔は中央がゆ合せず鈴状を呈する。
全長5.8mmでは背鰭,臀鰭,胸鰭の基底部に黒色素胞があるが,尾鰭基底部にはない。
全長14.4mmでは小黒色素胞が魚体全面に分布し,後頭部背面,胸鰭基底後方背面,背鰭基底,尾柄部背面,尾鰭基底部にはやや密集している。
全長23.3mmでは胸鰭基底に背面から体側に至る黒色横帯がある。頭胴部背面から体側にかけ て網目状の白色斑がある。各鰭の鰭条にそって黒色素胞がある(臀部はわずか)。 


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