• 体は側扁し,体高が大きくてマナガツオに似る。
  • 尾柄両側には小さな稜鱗があり,隆起する。
  • 鰓蓋後端には明瞭な1小黒斑がある。
  • 腹鰭は幼期まで存在するが,成魚では退化消失する。
  • 胸鰭は鎌状に長く,体の後半に達する。
  • 下顎は上顎より僅かに長い。歯は小さな円錐歯で1列に並ぶ。
  • 体長60cmに達する。

本種は1属1種で,内・外部形態がイボダイ科(現在のマナガツオ科)Stromateidaeとアジ科Carangidaeの中間性をおびていることから、CUVIERとVALENCIENNES(1832)はApolectus stromateus(=Stromateus niger)を模式種としてイボダイ科の中にApolectusなる属を設け,本種をここに位置づけJORDANら(1913)もこれに従った。その後JORDAN(1923)はApolectidae科を本種を模式種として創設したが,MCCULLOCH(1929)はApolectus属はサバ型魚類の1属によって先取されているとし,本属に対し,Formio属を設けクロアジモドキ科Fomionidaeを創設した。松原(1955)はFomionidaeをSMITH(1961)は先のApolectidae科を支持した。一方,APSANGIKER(1953)は本種の形態を調べ,Parastromateinaeなる亜科を設け,これをアジ科に包含すべきとし,篠原(1967)もこれを支持し,本種をParastromateus nigerとした。その後,これに従う研究者が多くみられ,本種の分類に関する混乱は統一されたかに思えた。しかし,WITZELL(1977)は内耳にかかる橋骨があるとしクロアジモドキ科を支持し,再ぴ諸学者の見解がまちまちとなっている。しかし本種は稜鱗,上主上顎骨,角舌骨に角舌窓をもつほか,アジ科魚類の特徴である臀鰭前方の遊離棘の存在が確かめられた。したがって,本種はアジ科に含めるか,もしくはParastromateinaeなる亜科にとどめ,クロアジモドキ科などの科を新たに創設する理由はないと考えられる。  

本種は南日本,東海,南海,インド洋,西太平洋域に広く分布する。以西漁場ではソコトラから台湾北部に至るやや大陸よりの陸棚上に分布する。本種は春になると産卵のため沖合から沿岸へ向って移動する。このため,4〜6月には舟山群島一帯に濃密群が形成され好漁場となる。その後は再び深みへと移る。本種は東海よりもそれ以南の海域に多く,南海の広東省北部の北部湾沿岸,昌感(盛漁期4〜7月),洲(4〜6月),珠江口万山群島(3〜4月),粤西一帯(4〜7月)粤東一帯(4〜5月)および福建省の東掟島南,兄弟東から島丘東北に至る海域(3〜8月)で多獲される。
本種の生息環境に関する記載は少なく,熱帯および亜熱帯性で,中・上層域に生息することが知られているにすぎない。秋季(10〜11月)東海における本種は水深55〜80mの海域から漁獲されている。なかでも60〜70mの範囲で多獲される。また,漁獲水温は20〜23℃で,量的には21〜23℃の範囲で多い。


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