• 体は卵形でよく側扁する。頭の外郭は急にまがり,両眼間隔域が隆起する。
  • 上顎前部には2対,下顎には3対の犬歯がある。また,両顎側方には2列の臼歯がある。鋤骨には歯がない。
  • 背鰭第1および2棘は極めて短く,第3および4棘は著しく伸びて糸状を呈する。第5棘もやや延長する。
  • 上後頭骨隆起は額骨の平坦部の上方までは延長しない。
  • 体は淡紅色で腹部は淡い。体側には数条の青色縦帯もしくは小斑点が数列散在する。
  • 主鰓蓋骨後縁膜と糸状に伸長した背鰭鰭膜は赤い。尾鰭の後縁は黒くない。
  • 体長35cmに達する。

本属にはヒレコダイとチダイE.japonicaがいるが,両種の識別についてはチダイの項で示したので参照されたい。なお,チダイのところでも触れたように,ヒレコダイ同様背鰭棘が著しく伸長し分布域も一部重複するものにタイワンダイ属のタイワンダイArgyrops bleekeri がいる。両種の区別は次表による。

ヒレコダイとタイワンダイの特徴
ヒレコダイ
E.cardinalis
タイワンダイ
A.bleekeri
1.左右の額骨はゆ合しない。 1.左右の額骨はゆ合する。
2.背鰭第1および2棘は極めて短く,第3,4棘が著しく伸長する(時には第5棘延長)。 2.背鰭第1棘は短く(時には2棘も短い),第2棘以下の5〜6棘が著しく伸長する。
3.臀鰭鰭条数は3棘9軟条。 3.臀鰭鰭条数は3棘8軟条。
4.体側には数条の青色縦帯あるいは青色斑点がある。 4.体側には青色の小斑点あるいは数条の青色縦帯がない。
5.体色は淡紅色で体側に濃赤色の横帯がない。
5.体色は淡赤色〜赤黄色で,体側に4〜6条の幅広い濃赤色の横帯がある(特に幼魚のそれは明瞭)。

本種は南日本,東海,南海,西部太平洋に分布する。以西漁場における分布は主に30゜N以南の東海南部海域に限られており,33゜N以北にはほとんどみられない。本種は東海中・南部と台湾海峡にみられる2つの系群が想定されており,両群はそれぞれ別の経路を回遊しているようである。台湾海峡の系群は,3月ごろから北上を始め,6月前後に台湾北西海域に達し,7月ごろから再び南下する。東海の系群は4月ごろ浙江省の魚山列島沖合に現われ,5,6月と北上を続け,7月には30°N線に達したのち,8〜9月になると南下を始める。魚群量は5月ごろが最も大きく,次いで9〜11月の期間である。夏期は広く分散して薄くなる。また,越冬期にあたる12月から2月にかけては東海での漁獲がほとんどみられなくなり,この間の分布域も明らかでない。
また,南海のものでは顕著な回遊現象はみられず,生殖のための深浅(10〜11月ごろ沖合の深みから沿岸の浅海へ向い,2〜3月ごろ再び沖合へ帰る)移動を行う程度である。


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