ケンサキイカには春生れ,夏生れ,秋生れの3発生群がある。発生群別にみると雌の成長は春生れ群が最もよく,平均月間成長量は1.8〜2.0cm,夏・秋生れ群のそれはいづれも約1.8cmと考えられている。本種は雌より雄が大型となり,雌の最大外套背長は41cm,雄は50cmとなる。なおブドウイカの場合は雌が27cm,雄が28cmである(西水研他1978)。
寿命は1年と考えられている。

産卵期は4〜10月で,盛期は4〜6月である。雌の最小成熟外套長は春生れ群で18cm以上,夏秋生れ群で15cmといわれている。
水槽内における本種の交接・産卵行動は次のように行われる。雄は雌と同方向に平行に遊泳しながら雌の腹面から近づき外套部前端腹面を全腕で補促して,交接腕*を外套内にそう入する場合と,雄は底層部を遊泳している雌と同じ方向に遊泳しながら背面より接近し,雌の頭部背面を補促し,生殖腕を外套腔にそう入する場合がある。交接時間はヤリイカより短く数秒間である。ケンサキイカ・ブドウイカとも成熟した雌の口囲膜に精莢の付着がみられることから産卵直前の交接以前にも交接が行われるとみられている。雌は産卵が近づくと他の個体から離れる。産卵は,主に夜から明け方にかけて行われる。
産卵行動は4〜10分で終る。産卵は遊泳しながら漏斗から1個の卵嚢を出し,すべての腕で包み込む。腕よりはみ出した部分は吸盤を用いて腕の中にとりこまれ腕の先端と卵嚢の根元がそろえられる。その後,ごみを除くため体を斜にして漏斗から水を強く底に吹きつける。この動作は何回も繰返されることもあるが,省かれることもある。最後に体を垂直にし,漏斗の口を体の後方に向け水を強く噴出し,卵嚢の根元を数秒間底に押しつけて付着させる。天然では外海域の水深20〜90mの潮どうしのよい砂地に卵嚢塊をなして数m間隔で産みつけられる。1個体当りの産卵数は1万以上に達する(卵嚢数にして約50個)(夏刈1972,西水研他1978)。

ケンサキイカの卵は寒天質の卵嚢中に収容されている。卵嚢の長さは10〜20cmで,その中に200〜400個の卵を含む。産卵直後の卵は長径約2mmの楕円形であるが,発生の進行にともない大型となり球形に近づく。ふ化日数は水温15〜20℃で20〜30日といわれる(西水研他1978,長崎水試1977)。
ケンサキイカのふ化直後の稚仔は成体に似た形態をしており,その大きさは外套背長約4mmで,ヤリイカの稚仔(5.5〜6.2mm)より小さく,色素胞の配列も若干異なる。また外套背長12mm以下の稚仔ではジンドウイカN.japonicaの稚仔との識別が難しいが,それ以上のものでは墨汁嚢上の大きな発光器の有無により,他のヤリイカ科と区別できる。(道津1973,道津ら1968,山本1943,OKUTANI et al.(1975))。
稚仔の分布はほぼ大陸棚上に限られている。 また,長崎近海域では秋季(10月)に多く出現するといわれる。