大型浮魚礁周辺の魚類相
清水弘文*・水戸啓一**・小林正裕**・矢野和成*・小菅丈治*
(*石垣支所沖合資源研究室・**沿岸資源研究室)
〔研究の概要〕
 大型浮魚礁周辺の魚類相を明らかにした。また、これらの魚種の胃内容物調査により、摂餌のために主要漁獲対象種が大型浮魚礁に蝟集するのではないことが明らかとなった。さらに、主要漁獲対象種は大型浮魚礁周辺で産卵している可能性が示唆された。 
〔背景・ねらい〕
 浮魚礁漁業は昭和57年頃に沖縄の漁業者が南方海域より導入したもので、その後、漁協単位で各海域に浮魚礁が設置されている。石垣島周辺では現在19基の浮魚礁が設置されており、そのうち18基は八重山漁業協同組合が設置したもので、他の1基は平成8年末に石垣島南東33q沖に沖縄県が設置した耐久性大型浮魚礁である(図1)。そこで、沖合資源研究室及び沿岸資源研究室では、大型浮魚礁周辺の魚類相及び食性等を解明する目的で平成9年より調査開始した。
〔成果の内容〕
 大型浮魚礁周辺で確認された魚種は20種類で、それらの分布様式を6つのタイプに分類できた(表1)。浮魚礁漁業は魚が漂流物に付く習性を利用した漁業であるが、何故魚が漂流物に集まるのかはまだよくわかっていない。一般には、小魚が物陰に隠れるため或いは漂流物に付いている餌を食べるために漂流物の周辺に集まり、次いでそれらの小魚を食べるためにより大型の魚が蝟集すると考えられていた。潜水調査により、大型浮魚礁に付いている小魚はオヤビッチャ、テンジクイサキ、ミナミイスズミ等で個体数はいずれも数十〜数百匹程度である。ところが大型浮魚礁に集まるキハダやカツオは数百匹から数千匹、時には数万匹であり、キハダやカツオの胃袋のなかを調べてみるとオヤビッチャなどの大型浮魚礁に集まっている小魚は出現せず、大型浮魚礁には集まらない沿岸性の魚やイカ類が出てくる。これらの結果から、キハダやカツオが餌を食べるために大型浮魚礁に集まるのではないということが明らかになった(図2 ,3)。
 また、大型浮魚礁の周辺海域で稚魚ネットを曳くとキハダ、カツオ、クロカジキ等の稚魚が採集されることがある(図4)。大型浮魚礁周辺の海域はキハダやカツオ、クロカジキなどの産卵場としても利用されている可能性も示唆された。 
  今後、蝟集魚の分布域の特徴等を実際の漁業に活用することが望まれる。また、何故大型浮魚礁に魚が集まるかなど解明していかなければならないであろう。