養殖アイゴ類大量へい死の原因
佐野元彦・皆川恵・玉城泉也・林原毅・福岡弘紀
(石垣支所資源増殖研究室)
〔成果の概要〕
本邦亜熱帯域で養殖が行われているアイゴ類の大量へい死が連鎖球菌による感染症であることを明らかにした。感染実験により、この菌が主要養殖対象種であるヤイトハタ及びハマフエフキに対しては病原性が低いことも解明した。
〔背景・ねらい〕 
 平成10年4月石垣市登野城に魚類養殖場が完成し、八重山での本格的な魚類養殖が始まった。ヤイトハタ、マダイ、ハマフエフキの人工種苗のほか、アイゴ類、アジ類等の天然稚魚が海面小割網生簀に収容され、養殖されている。ハタ類等の魚介類増養殖は緒についたばかりであり、亜熱帯地域での水産養殖業を振興するため、資源増殖研究室では、養殖における大きな障害の一つである疾病も含め、水産増養殖対象魚介類の生理・生態の解明や養殖技術に関する技術開発を行っている。平成10年8月に養殖のアイゴ類が大量へい死し、その原因究明のために細菌検査、診断用血清による検査及び感染実験を行った。
〔成果の内容〕
 @ 発症の経過:平成9年11月に西表島の藻場で漁獲したシモフリアイゴ等数種のアイゴを登野城魚類養殖場の小割生簀(5  ×5×4m)2面に収容し、飼育したところ、平成10年8月28日頃よりへい死魚が目立ち始めた。この時の放養尾数は計約    4,000尾、魚体重は100g強、水温は約31℃であった。へい死魚の外観的特徴はなく、瀕死魚は緩慢に遊泳し、時に狂奔遊   泳して死に至った。へい死が収まらず、9月7日には累積へい死率が50%を越え、この時点で原因究明の調査依頼を受け、   へい死魚の検査を実施した。
 A へい死魚の肝臓は著しく赤変していた(図1)。細菌検査の結果、全ての魚の肝臓、腎臓、脾臓及び脳から一種類の細菌   が分離され、グラム陽性の球菌で(図2)、β溶血性連鎖球菌と推定された。
 B この分離菌を石垣島で漁獲したシモフリアイゴとヒメアイゴの筋肉内に接種した結果、全てが死亡した(表1)。これらの死  亡魚は養殖場でのへい死魚と同様な症状を示し(図3 )、接種菌が再分離されたことから、分離菌が今回の大量へい死   の原因であると判断された。
 C この分離菌はヤイトハタやハマフエフキに対して病原性が低かった(表1)。
 D 薬剤に対する感受性試験では、塩酸オキシテトラサイクリンやアンピシリンに対し高い感受性を示した。
 以上の結果から、今回のアイゴ類の大量へい死はβ溶血性連鎖球菌の感染によることが明らかとなり、本研究の成果を基に薬剤投薬が行われた結果、へい死が減少した。