有明海における長期の漁場環境モニタリング結果の図化


[要約]
有明4県(福岡県、佐賀県、熊本県、長崎県)が水産庁補助事業として長年にわたりモニタリングしてきた浅海定線調査の結果を水平分布図時系列図からなる図集にまとめ、有明海における海洋環境の長期的・季節的変動を把握するための基礎資料とした。
西海区水産研究所東シナ海海洋環境部生物環境研究室、福岡県水産海洋技術センター・有明海研究所・のり養殖課、佐賀県有明水産振興センター・普及室、
長崎県総合水産試験場・漁業資源部・海洋資源科、熊本県水産研究センター・漁場環境研究部 [連絡先]  095−833−2691 [推進会議] 西海ブロック [専門]   漁場環境 [研究対象] プランクトン [分類]   行政 [水産研究技術開発戦略別表該当項目]3(1)海洋環境モニタリング技術の開発

[背景・ねらい]
有明海の海洋環境については、水産庁の漁場モニタリング事業(国庫補助)である浅海定線調査により、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県が長年にわたり調査を実施し、その観測結果は各県地先の漁場環境を把握するために活用されている。本研究は、各県と西海水研が協力して、浅海定線調査結果の長期的・季節的な変動特性を抽出するため水平分布図と時系列図を作成し、有明海の海洋環境の全体像の把握、現状の理解と将来予測に向けた基礎資料とすることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

  1. 図集に用いた資料は浅海定線調査開始時(福岡県:1965年、佐賀県:1972年、長崎県:1992年、熊本県:1974年)から2000年12月までの水温(例として図1に示した)、塩分、透明度、プランクトン沈澱量、溶存酸素、化学的酸素要求量、無機態窒素、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、リン酸態リン、ケイ酸態ケイ素の12項目である。
  2. 県別に各項目の時系列図を作成したところ、長期的変動は水域により傾向が異なったが、季節的変動は湾奥部の福岡県及び佐賀県が同様の特徴を示した。
  3. 有明海全体の水平分布は各県が共通に観測している測定層(水深5mまたは海底上1m)のデータを用いて作成し、その変動の特徴は主に湾奥部または沿岸域から始まり、湾央部や沖合域に広がる傾向が認められた。
[成果の活用面・留意点]
有明4県が長年蓄積した観測結果を整理・収集し、利用しやすい図集として印刷したことで有明海の海洋環境を理解するための基礎資料となった。得られた解析結果は有明海ノリ等不作対策の関連で第三者委員会の資料として活用されている。作成された図集は複写を有明4県各機関に配布し漁場環境の把握に役立てている。留意点としては、データの品質管理が進行中であるため、今後図が修正される可能性がある。
[具体的データ]
図1 浅海定線調査結果により作成された水平分布図の例(2000年1〜12月の水温)

[その他]
研究課題名:有明海のプランクトン生産と環境変動特性の把握
予算区分:行政対応特別研究「有明海の海洋環境の変化が生物生産に及ぼす影響の解明」
研究期間:平成13〜15年度
研究担当者:横内克巳、清本容子、岡村和麿、長田 宏、木元克則、西内 耕、藤原 豪、内藤 剛、吉田賢二、西村大介、吉村直晃
発表論文等:有明海における浅海定線調査と人工衛星海色観測によるモニタリングについて(九州沖縄地区合同シンポジウム要旨集、p8-9)
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