潮汐により大きく移動する貧酸素水塊


[要約]
有明海湾奥部で形成される貧酸素水塊が潮汐により大きく移動・拡散する実態を把握した。
西海区水産研究所東シナ海海洋環境部高次生産研究室・生物環境研究室・福岡県水産海洋技術センター有明海研究所・佐賀県有明水産振興センター・長崎県総合水産試験場・熊本県水産研究センター
[連絡先]    095-833-2693
[推進会議名]   西海ブロック
[専門]         漁場環境
[研究対象]     水質
[分類]         研究
[研究戦略別表該当項目] 3(1)海洋環境モニタリング技術の開発

[背景・ねらい]
近年有明海湾奥部では夏季に貧酸素水塊が発生するようになった。有明海では大きな潮汐に伴って水塊が大きく移動することが知られている。このため、貧酸素水塊が形成された場合には、それが湾内を大きく移動し、各県地先の環境及び魚類、二枚貝類などの水産生物へ影響を与えることが推察される。そこで、潮汐による貧酸素水塊の挙動を明らかにすることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

  1. 諫早湾及び有明海湾奥部に観測点を配置し、2001年7月及び2002年7月の大潮時の3時間毎に観測点を巡回し、水温、塩分、溶存酸素、他の項目を機器測定及び採水により観測した。
  2. 2001年7月6日における西海区水産研究所による観測では、満潮時に諫早湾内の底層に分布した貧酸素水塊が引き潮により諫早湾から外に出る様子が捉えられた(図1)。
  3. 2002年7月9日に、西海区水産研究所と、福岡県、佐賀県、熊本県、長崎県の各水産研究機関と共同して7隻の調査船で観測した結果、有明海湾奥部底層の低酸素水が引き潮に運ばれて湾中央部まで南下移動する様子がうかがえた(図2)。
  4. これらの調査結果から、有明海及び諫早湾で貧酸素水塊が発生した場合には、それが潮汐により大きく移動・拡散することが推察される。

[成果の活用面・留意点]

有明海の漁場環境保全のための基礎的知見として活用される。なかでも、観測機器を設置して連続観測を行う環境モニタリング調査における観測点の配置計画決定などの参考となる。
[具体的データ]
図1 諫早湾周辺の底層(海底上1m)の溶存酸素濃度(mg/リットル)(2001年7月6日)

図2 有明海湾奥部底層(海底上1m)の溶存酸素濃度(mg/リットル)(2002年7月9日)


[その他] 
研究課題名:二枚貝生産に影響を及ぼす貧酸素水塊の分布特性の把握 
予算区分:行政対応特別研究「有明海の海洋環境の変化が生物生産に及ぼす影響の解明」
研究期間:平成14〜15年度 
研究担当者:木元克則、西内耕、岡村和麿 
発表論文等:反復観測でとらえた有明海の貧酸素水塊の挙動 
      (平成15年度日本水産学会大会講演要旨集)
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