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２．植物プランクトン
概要
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（１）出現状況 |
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①クロロフィルa量（資料２・３、地図１・２） |
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ア）自動観測機器によるクロロフィル色素の測定では、４月１７～１９日に６観測点のほとんどで高い値を示した（懸濁物量のピークを勘案した結果）。なお、この結果は、機器補正のための採水による実測定結果でも裏付けられた。 |
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イ）沖合モニタリング地点での採水による測定結果では、５月中旬後半にのみ明瞭なピークが観察された（５観測点のうち、３点）。 |
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特徴：有明海奥部沿岸域に沿って、４月中旬に高い値が見られた。 |
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②ＴＥＰ（透明重合物質粒子）量（資料４） |
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ウ）自動観測機器による観測地点でのＴＥＰ（採水分析結果）は、４月下旬から５月初旬にかけてピークを示した。 |
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エ）沖合モニタリング観測地点でのＴＥＰ（採水分析結果）は、４月下旬にピークを示した。 |
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特徴：有明海奥部から諫早湾湾口付近の有明海中央部にかけて、４月下旬～５月上旬に高い値が見られた。 |
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③粘質状浮遊物（資料５） |
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オ）３月中旬に島原半島北部周辺で観察された（昨年同様の海表面の浮遊物）。 |
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カ）４月中旬佐賀県太良町沖で観察された。 |
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キ）５月７～２０日頃諫早湾内をはじめ、佐賀県大浦沖から農区タイラギ漁場（Ｔ８）地点、島原沖から西有家町沖で観察された（海面下に糸状の多数の浮遊物）。 |
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（２）それぞれの関連性について |
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植物プランクトンがその分解過程においてＴＥＰを産生し、それが肥大化して粘質状浮遊物になるとの知見に基づいて観測結果を検討すると、キ）で５月中旬に確認された粘質状浮遊物は、４月１８日前後のクロロフィルa量（①－ア））のピークから４月下旬～５月上旬のＴＥＰ（②）のピークを経る一連の発生過程によって出現したと推定することができる。 |
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（３）植物プランクトンの飼育・培養について |
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しらふじ丸等の調査でネット採集を試みたが、十分な量を採集できず、飼育実験による粘質状浮遊物の産生状況の観察は行えなかった。 |
| 資料１ |
| 平成１７年粘質状浮遊物原因生物究明調査 |
| ベントス調査結果のまとめ |
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| ３月及び４月に行ったベントス調査結果は以下のとおりです。採集と種の同定・計数は５機関で担当し、西海水研が助力しました。本取りまとめは、西海水研で行い、他４機関が協力しました。なお、粘質状浮遊物の原因となるベントスに注目し、重量で相対的に多く観察された二枚貝類・多毛類・端脚類について、解析しました。 |
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| ●各県干潟および地先 |
| ・福岡県 |
| 干潟（柳川、大牟田）は、アサリ、サルボウ、コケガラスなどの二枚貝類の生物量が多かった。３種を合わせると、殻付湿重で500～6300g／㎡に達した。多毛類では、コケゴカイとフサゴカイ科の一種の密度が高かったが、生物量は最高で湿重量で35～570g／㎡であった。卵塊を産生する多毛類としては、ミズヒキゴカイが比較的多く出現した。調査地では４月に、１㎡当たり100を越える卵塊が観察されているが、ミズヒキゴカイのものと考えられる。ミズヒキゴカイは３月には１４地点で総湿重量133g、４月には１２地点で総湿重量170g出現していた。 |
| 潮下帯のベントスは、種数・個体数ともに極めて乏しく、二枚貝類ではチゴマテ、チヨノハナガイ、多毛類ではイトゴカイ科の一種が出現したが、いずれも50g／㎡未満であった。３月と４月ともに上記の傾向を示し、月間で顕著な差異はなかった。 |
| ・佐賀県 |
| 干潟ではアサリ、サルボウ、シズクガイ等の二枚貝類が目立ち、殻付湿重量で10～800g／㎡であった。多毛類では、ツバサゴカイの棲管が多数採集されたが、ツバサゴカイ自体は採集されていない。棲管は本来長大なＵ字型であるはずだが、一部分しか採集されていないので、採集の時に巣からゴカイが逸脱したか、または、個体が死んだあとに棲管だけが残ったと考えられる。他のゴカイ類は個体数も少なく、小型種であった。３月には網洗で、４月には七浦の一地点で、ドロクダムシがかなり出現したが、湿重量では、１㎡辺り1gに満たなかった。 |
| 潮下帯では、端脚類（主にホソツツムシ）の個体数が多かったが、小型の生物であるため、棲管を含めても湿重量では7g／㎡であった。多毛類ではチロリ、イトゴカイ科の一種等が出現したが、種数も個体数も少なかった。干潟、潮下帯ともに、３月と４月で顕著な差異はなかった。 |
| ・長崎県 |
| 長崎県のベントス調査は、島原半島北部から東部にかけての沿岸で行い、干潟の調査点は設定しなかった。出現種数は、いずれの月も多比良港沖(N3)と島原市南部の２地点（N7, N9）で多かった。優占種は地点毎に３月と４月で異なった。顕著なものを挙げると、３月にはN3で、多毛類ではホコサキゴカイ科、タケフシゴカイ科、およびカンムリゴカイ科の一種が多く、３種群を合わせると、湿重量で300g／㎡を越えた。甲殻類では、同じくN3でユンボソコエビ科の端脚類が多かったが、湿重量では17g／㎡であった。４月には、前月には全くいなかった紐形動物が島原市南のN7で、またビロードマクラがN3で多数現れ、前者の湿重量は160g／㎡、後者に至っては8000g／㎡を越えていた。多毛類では、N3, N7, N9で、３月には出現しなかった種類が多数現れたが、ほとんどが小型種で、湿重量は１㎡当たり各種17～64gであった。湿重量が多かった多毛類は、N3でカンムリゴカイの一種（515g／㎡）、N7でイソメ科の一種（270g／㎡）、N9でウロコムシ類（２種合わせて513g／㎡）であった。なお、N3ではいずれの月もスナクモヒトデが多く、また、いずれの月も、N5は種数・生物量ともに乏しかった。 |
| ・熊本県 |
| 干潟では多毛類とその棲管を重点的に調査した。干潟には多数の棲管が見られたが、生物がいない空のものが多かった。棲管は主にスゴカイイソメのものと考えられる。棲管はちぎれており、採集時に本体が逸脱したものと考えられる。また、棲管と同時に、ミズヒキゴカイが採集できた。体長は5cm前後。この種は長径数㎝の卵塊を作る。多毛類の密度は、緑川干潟では10～40個体／㎡、菊池川干潟では150個体／㎡、荒尾干潟では、40～80個体／㎡であった。棲管の主であるスゴカイイソメは比較的大型の種であるが、今回採集されなかったため、密度や生物量の評価は出来なかった。 |
| 潮下帯では１サンプル当たり６～４１種が出現したが、そのほとんどが１～５個体／0.0625㎡であった。ホソヨコエビが３箇所で比較的高密度に出現し、特に緑川沖の地点では３月に約11,000個体／㎡に達した。大型の多毛類は出現しなかった。 |
| ●しらふじ丸での沖合調査 |
瀬戸内海区水産研究所のしらふじ丸により、４月１２日と１３日に、有明海中央部のベントス調査を行った。全体的にベントス相は貧弱で、顕著な優占種としては、多比良港沖のビロードマクラ（1580個体／㎡、殻付湿重量230g／㎡）が挙げられるにすぎない。多毛類が諫早湾口の沖で、3300個体／㎡出現した。種は特定できなかったが、イトゴカイ科などの小型種が多く、湿重量では合計でも23g／㎡であった。南部海域の島原半島よりの地点と熊本市よりの地点の計４地点で、端脚類の個体数が多かったが（200～730個体／㎡）、湿重量では1.5～15g／㎡であった。
諫早湾口から多比良港沖にかけての３地点で、スナクモヒトデの１種が比較的多く現れた（個体数：300～500／㎡、湿重量：5～18g／㎡）。長崎県の結果と合わせると、有明海中央部に、クモヒトデ類とビロードマクラを特徴とする群集が存在すると考えられる。 |
| ●まとめ |
今回の調査から、有明海の干潟と潮下帯のベントス群集の特徴は、以下のようにまとめられる。
・干潟と沿岸よりの潮下帯では、二枚貝類が優先している。大型の多毛類も生息しているが、個体数は少ない。多毛類と端脚類は小型種が多い。
・沖合は種数、個体数ともに乏しい。諫早湾口と荒尾の間の有明海中央部には、ビロードマクラとクモヒトデ類を特徴とする動物群集がある。
・干潟・潮下帯ともに、卵塊などの形で、大量の生殖関連物質を産生する可能性がある生物は特定できなかった。可能性としては、スゴカイイソメ、ミズヒキゴカイが挙げられるが、どちらも福岡県から熊本県の干潟の一部に生息しているのみで、生物量も多いものではない。 |
| 以 上 |
