八重山周辺におけるクロマグロ親魚の漁獲状況
清水 弘文
(西海区水産研究所石垣支所沖合資源研究室)


[成果の概要]
八重山周辺海域に4〜6月にかけて産卵のため回遊してくるクロマグロ親魚の体長組成、年齢組成、年齢査定のための適切な採鱗部位、漁期の特徴などを明らかにした。
[背景・ねらい]
毎年4月の中旬から6月はじめにかけて八重山周辺海域にはクロマグロの親魚が産卵のために回遊してくる。この産卵群を対象にマグロはえ縄漁業が行われているが、これら産卵群の生物学的特性はほとんど解明されていない。本研究では体長組成および年齢組成の経年変化を明らかにすることにより、クロマグロの資源状態を把握することを目的とした。また、鱗による年齢査定の再検討、漁場環境と漁況の関係についても検討した。
[成果の内容]
  1. 例年の水揚げ尾数は50〜60本程度であるが、平成10年の実績は 260本程度、平成11年は320〜330本もの水揚げがあったが、平成12年は100本余りの水揚げであった。例年6月に入ると漁獲はほとんど無くなるが、平成11年には6月いっぱいまで漁獲があった。さらに、平成9年まではスポンジ状の肉質のクロマグロがおよそ半数を占めていたが、平成10年は数例のみ、平成11年および12年は全く認められなかった。
  2. 平成11年の測定尾数は121尾で、尾叉長では205pと215pの2カ所にピークが認められ、平均205pであった(図1)。尾叉長より推定した体重は155sと175sにピークが認められ、平均153sであった。尾叉長より推定した年齢は9歳魚が漁獲の主体で、10歳魚がこれに次いだ(図2)。平成11年漁期の特徴としては、これまでに最高の漁獲があったことと、漁期が6月いっぱいまで続いたことがあげられる。この一因として平成11年は例年に比べ表面水温が低めに推移したことが考えられる。また、11月に西表島の北20マイル沖付近でクロマグロ親魚が漁獲されており時期的に珍しいことであった。
  3. 平成12年の測定尾数は79尾であり、尾叉長は前年よりも一回り大きく、220pピークが認められ、平均は212pあった(図1)。尾叉長より推定した体重は180sにピークが認められ、平均171sあった。尾叉長より推定した年齢は10歳魚が漁獲の主体で、11歳魚がこれに次いだ(図2)。平成12年漁期の特徴として、初漁が3月末と例年より1旬早かったことと、雄の割合が約2/3と多かったことがあげられる(図3)。
  4. 通常の採鱗部位は背鰭の後方であるが、この部位の鱗はこれまでの報告によると、尾叉長160p以上のクロマグロでは鱗の判読率は50%、180p以上では10%程度となり、高齢魚ほど判読率は下がるとされている。 本研究で尾柄部から採鱗する方法を採用したところ、この部位の鱗からの輪紋は高齢魚でも読みやすく、ほとんど全ての鱗紋が判読でき、クロマグロの採鱗部位は従来の部位に比べ尾柄部が適切であることが明らかとなった。しかし、鱗の中心部は肥厚していて、初期形成輪は判読しにくく(写真1)、鱗による年齢査定結果と尾叉長より推定した年齢には2歳の開きがあった。この原因として、初期形成輪を見落としている可能性は大きく、今後さらに若齢魚の鱗について検討していく必要があろう。
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