東シナ海大陸棚域における底層での栄養塩(リン酸塩、硝酸+亜硝酸)の再生
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[要約]
- 東シナ海大陸棚域における、海底付近での栄養塩の冬から夏への底層での見かけの濃度増加はリン、窒素で、1リットル当たり0.41および6.1マイクロモルであった。また、この増加は有機物の分解・再生に起因していることが推測された。
西海区水産研究所 石垣支所 海洋環境研究室
[連絡先] 09808−8−2869
[推進会議] 西海ブロック
[専門] 物質循環
[研究対象] 海洋構造
[分類] 研究
[水産研究技術開発戦略別表該当項目]3(1)低次生物生産機構の解明
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[背景・ねらい]
- 東シナ海は北太平洋に隣接する縁辺海であるが、長江等の大河川からの栄養塩の供給等を強く受け、比較的高い生産力を維持している海域であり、漁業生産・地球環境という観点からも生態系に係わる物質の循環に関する研究は重要である。海洋における生物生産の根幹を成すものは植物プランクトンであるが、これを取り巻く環境、とりわけ栄養塩の挙動は植物プランクトンの成長に大きく影響を及ぼす。東シナ海では春季にいわゆるブルーミングにより大きな生産が起こり、表層付近の栄養塩は消費されるが、その後秋季まで持続的に生産が続く。また、大陸棚底層付近では夏季から秋季にかけて発達した温度躍層の下で栄養塩濃度の増加が観測される。本研究では、大陸棚上の観測点において、底層付近の栄養塩の増加を推定することを目的とした。
[成果の内容・特徴]
- 東シナ海大陸棚縁辺部において(図1)1999年7月(株)日本海洋所属第三開洋丸により、ニスキン採水器を用いて200mまで鉛直的に採水を行った。得られた試水は凍結保存し、その後実験室で解凍後ブランルーベ・トラックス800によりリン酸塩および硝酸+亜硝酸の定量を行った。また、船上でウインクラー法により溶存酸素を定量した。
- 得られた栄養塩濃度と見かけの酸素消費量(AOU)をプロットし、分解再生される栄養塩とその際消費される酸素との関係を検証した。それらのモル比はリン酸塩:硝酸+亜硝酸塩:酸素=0.00684:0.0998:1となった。なお、これらの関係は海底で再生・蓄積される栄養塩の影響を避けるために、水深が深い(287m)調査点DK07において求めた。また、リン酸塩と硝酸+亜硝酸の比は1:14.6となり一般的な外洋におけるものと同等の値であった。
- 求められた直線をDK08及び09の躍層下(海底近く)のプロット点(黒点)に当てはめた(図2;太線)。また、酸素との比は観測点によらず一定と仮定した。冬季はAOUは0であり、太線のAOUが0の時の値と、黒点の夏季観測値との差が冬季から夏季への間に、有機物の分解により増加した濃度であると推定された(1リットル当たりリン酸塩0.41マイクロモル、硝酸+亜硝酸6.1マイクロモル)。
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[成果の活用面・留意点]
- 本研究は、東シナ海大陸棚域底層における栄養塩の再生量を縁辺部をモデルとして見積もったものである。得られた結果は東シナ海における栄養塩循環像を把握する上での貴重な資料と成る。今後物理、生物特性を含めたより広範囲の時空間的な研究成果と組み合わせることにより、東シナ海大陸棚域における栄養塩循環をより明確に把握することができ、生物生産、漁業資源管理上の基礎的資料となる。
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[具体的データ]
図1 調査点
- 図2 見かけの酸素消費量(AOU)とリン酸、硝酸+亜鉛酸の関係;図中の曲線はDK07における回帰直線。太線はこの直線をDK08、09の海底付近の観測値(黒点)にあてはめたもの。
[その他]
研究課題名:炭素循環に関するグローバルマッピングとその高度化に関する国際共同研究
予算区分:科振調費「炭素循環に関するグローバルマッピングとその高度化に関する国際共同研究」
研究期間:平成13〜14年度
研究担当者:阿部和雄
発表論文等:夏季東シナ海大陸棚におけるカドミウム、リン、窒素の再生、水産総合研究センター研究報告(投稿中)
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