タイラギの生理状態を知る活力指標としてグリコーゲンに着目し,2000年2月〜2001年6月までの月別試料から2カ年の年級群について,その蓄積量の季節変化を明かにした(
図1)。1999年秋発生群では2000年2〜4月までは順調に蓄積し,4月にグリコーゲン蓄積量の年間の最大値を示したが、その後徐々に減少し、産卵期が終了した10〜12月にはゼロに近い値を示した。この時期は、タイラギ漁場で異常斃死現象が観察された時期と一致しており、グリコーゲンの低蓄積状態の継続が何らかの悪影響を反映している可能性が示唆された。また、2000年秋発生群について2000年12月〜2001年6月まで同様の調査を行ったところ、1999年秋発生群とは異なり、春季のグリコーゲンの明瞭な蓄積は観察されなかった(
図2)。2001年は6月にタイラギの異常斃死現象が発生したが、2000年に比べ斃死時期が早まった原因として、春季のグリコーゲンの蓄積が充分でなかったことが係わりを持つ可能性が示唆された。
タイラギ漁は有明海で冬季に行われる主要漁業の一つであるが、平成11〜13年度の潜水器漁場における漁獲量はほぼゼロと過去に例のない不振が続いている。当研究室では、福岡県水産海洋技術センター有明海研究所の協力により月別のタイラギ試料を入手し、健康診断基準の確立を目的として、貝柱のグリコーゲン蓄積量をアンスロン法により定量し季節変化を把握した。