東シナ海・日本海産トラフグの資源解析の試み


[要約]
東シナ海・日本海産のトラフグについては正確な漁獲統計もなく、資源管理において最も基礎的な漁獲物の年齢組成調査さえ不十分であった。九州西ブロック資源回復ワーキンググループは下関唐戸魚市場に銘柄別漁獲量資料が存在することに着目し、トラフグの月別入り数別箱数と月別入り数別年齢組成の関係に基づいて年齢別漁獲尾数の推定を試み、コホート解析により資源量を推定した。
西海区水産研究所東シナ海漁業資源部底魚生態研究室・福岡県水産海洋技術センター・山口県水産研究センター
・佐賀県玄海水産振興センター・長崎県総合水産試験場・熊本県水産研究センター [連絡先] 095-860-1600 [推進会議名] 西海ブロック [専門] 資源評価 [研究対象] フグ [分類] 行政 [研究戦略別表該当項目] 1(1)水産資源の評価・管理手法の高度化

[背景・ねらい]
東シナ海・日本海産のトラフグについては古くから多くの研究者により資源・生態の研究が実施されてきたにもかからず、正確な漁獲統計もなく、資源管理型漁業の推進において最も重要な年齢と成長および年齢組成に関する調査が十分実施されてこなかった。そこで九州西ブロック資源回復ワーキンググループ(山口、福岡、佐賀、長崎、熊本県の水産研究機関及び西海水研)は下関唐戸魚市場(株)に詳細な銘柄(入り数)別漁獲量(箱数)資料が存在することに着目し、トラフグの月別入り数別箱数と月別入り数別年齢組成の関係に基づいて年齢別漁獲尾数の推定を試みた。
[成果の内容・特徴]
各月のトラフグの漁獲物の全長組成に正規分布を適用することにより、全長と年齢組成の関係を求め、さらに各月の入り数と年齢組成の関係(入り数別年齢組成)を求めた。トラフグの年齢・成長・入り数別年齢組成の関係が年により差がないという仮説を設けた上で、月別入り数別年齢組成と月別入り数別取扱箱数の関係から1993年までさかのぼって年齢組成を推定した。これらの資料をもとにコホート解析を行って東シナ海・日本海産のトラフグの資源量を計算した。
[成果の活用面・留意点]
得られた内容は我が国周辺水域の漁業資源評価に活用されるとともに、資源回復計画の基礎資料となる。今後、脊椎骨にみられる輪紋に基づいて年齢組成の検証が実施する予定である。
[具体的データ]
図1 下関唐戸魚市場(株)における外海産トラフグの取扱量に基づいて推定されたトラフグ日本海・東シナ海系群の年齢別漁獲尾数(九州西ブロック資源回復計画研究者ワーキンググループ作成)。
説明:1993年の総漁獲尾数は28万尾であったが、1997年以降は10万尾を下回った。年齢別にみると1歳魚の割合が46〜72%でもっと多く、次いで2歳魚が22〜40%、3歳魚以上が4〜9%であった。0歳魚の割合は比較的少なく0.9〜5.4%であった。全体的な傾向として、各年齢ともに平行して漁獲尾数が減少している。
図2 自然死亡係数=0.357の場合のトラフグの資源量と漁獲割合
説明:コホート解析の結果、トラフグ日本海・東シナ海系群の資源量は1993年以降減少し、2000〜2002年は212〜217トンの低水準で推移した。
図3 トラフグの漁獲係数(漁獲の強さ)の経年変化
説明:漁獲係数(漁獲の強さ)は0.8〜1.2で推移し、1990年代後半以降の加入水準は低い状態が続いており、資源水準は低位で動向は減少と判断した。

[その他]
研究課題名:カレイ類、ケンサキイカ等主要底魚資源の成長・成熟等の解明と主要フグ類の分布・回遊生態の解明
予算区分:一般研究
研究期間:平成13〜17年度
研究担当者:上田幸男・青沼佳方
発表論文等:
目次へ戻る