改良袋網による小型定置網ウミガメ混獲防止


[要約]
ウミガメ類など漁獲対象外生物の、漁業による混獲死亡は、海洋希少生物保護の観点から国際的に問題となっている。一方、漁業者には混獲による漁具の損傷が大きな経済的打撃である。本研究では、ウミガメの定置網での混獲死亡事故防止のために、小型定置網の袋網にウミガメ脱出口を装着する漁具改良試験を行い、効果があることが示された。
西海区水産研究所石垣支所亜熱帯生態系研究室
[連絡先]      0980-88-2865
[推進会議名]  西海ブロック
[専門]        漁業生産技術
[研究対象]    海亀類
[分類]        研究
[研究戦略別表該当項目] 1(3)小型魚等の混獲・投棄実態の把握と混獲防止技術の開発

[背景・ねらい]
近年、生物多様性保全・希少生物保護の観点から、ウミガメ類の資源動向と漁業との係わりが世界的に注目されている。サンゴ礁域の小型定置網(図1)は水深数mの浅い礁池内で操業され、ウミガメ類の混獲が頻繁に起こるとの情報も漁業者から得られている。そこで、ウミガメ類の定置網による混獲死亡防止のために、サンゴ礁池内で操業される小型定置網を用いて、袋網に脱出口を設置することの有効性を検討した。

[成果の内容・特徴]
沖縄県石垣島で最も混獲が多い直甲長40〜60cmの未成熟アオウミガメを袋網に入れ、ダイバーがウミガメの行動を観察し水中ビデオで記録した。ウミガメは漏斗網上部(図2−@)及び魚取り部(図2−A)で袋網からの脱出を試みることが明らかとなった。魚取り部に脱出口を付けると操業に支障があるため、脱出口は漏斗基部上面に付けるのが適当であると考えられた。漏斗網基部のすぐ上の袋網に40×50cmの四角い脱出口をあけ、基部方向に開くように蓋を付けた(図3)。脱出口と蓋は3〜6mmのステンレス棒で縁取りし、蓋には袋網と同質の網地を用いた。その結果、未成熟アオウミガメの日中の平均的呼吸間隔である10分以内に80%のウミガメが脱出に成功した(図4)。脱出口付き袋網内の漁獲物の96%が翌日まで袋網内に滞留していることが確認され、脱出口の漁獲への影響は少ないと考えられる。

[成果の活用面・留意点]
 袋網に脱出口を設けることにより定置網でのウミガメ類混獲死亡を防止する効果が期待できる。脱出口の漁獲への影響は少ないと考えられ、混獲による漁具の損傷も低減されると期待される。海洋希少生物保護の観点から国際的に漁業に対する圧力が高まる中、生態系保全に考慮した健全な漁業の推進に寄与することができる。

[具体的データ]
図1.サンゴ礁池内で操業される小型定置網の構造
図2.袋網内のアオウミガメの行動(赤線は頭部の軌跡).@に脱出口を設置
図3.ウミガメ脱出口の構造
図4.改良袋網から脱出するアオウミガメ


[その他]
研究課題名:マグロ漁業の混獲実態と混獲生物の分布・生態の把握
予算区分:国際資源調査等推進対策事業
研究期間:平成14〜15年度(継続中)
研究担当者:阿部 寧、澁野拓郎、高田宜武、橋本和正
発表論文等: Preliminary study to prevent incidental capture of sea turtles by the pound net. (2003). 
Proceedings of the 3rd Workshop on SEASTAR2000, 35-38.
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