秋季における東シナ海産アカムツの分布構造
青沼佳方・上田幸男
(東シナ海漁業資源部底魚生態研究室)
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[成果の概要]
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秋季における東シナ海底魚類の分布構造調査を行った。その結果、東シナ海産のアカムツ(図1)は(1)成魚は鉛直移動をし、陸棚域と斜面域の両域に生息していること、(2)幼魚および稚魚は陸棚域のほぼ同一箇所に生息することなどが明らかになった。また、日本海産アカムツとの遺伝子比較をおこなった。
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[背景・ねらい]
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日中暫定措置水域および日韓暫定水域に対応または隣接する東シナ海の底魚魚類相の分布構造に関する知見を深化させることは、資源評価精度向上および生物多様性評価・加入量変動予測の基礎資料を得る上で重要である。また、東シナ海は対馬暖流経由で日本海への資源の供給源と考えられているが、数種の底魚類において東シナ海産と日本海産で明確な形態差が有ることが確認されていることより、幼稚魚の分散経路として両海域間の不連続性の可能性も考えられている。ここでは東シナ海で採集されるアカムツについて、その分布構造を紹介するとともに、東シナ海産アカムツと日本海産アカムツの遺伝解析を行う上での予備実験(制限酵素多型解析)を行ったのでその結果を紹介する。
[成果の内容・特徴]
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調査海域:調査は西海区水産研究所漁業調査船陽光丸により10月中旬から11月にかけて、東シナ海陸棚域36地点(水深90m〜150m)、斜面域15地点(水深200m〜400m)について行った(図2)。
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採集器具:成魚はトロールネットを用い、曳網速度約3.5ノット、曳網時間30分で行った。幼稚魚はソリネットおよびIKMTの多段引きにより、それぞれ曳網時間15分で行った。
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分布構造:東シナ海のアカムツ成魚は陸棚域130m帯と斜面域350〜400m帯から主に採集され、中間の150〜250m帯からは採集されなかった。この陸棚域集団と斜面域集団の遺伝子を調べたところ両集団間の差異は検出されず遺伝的には単一集団であることが示された。よって本種は両水深帯を鉛直移動していることが明らかになった。またソリネットによって採集された幼魚およびIKMT多段引きよって採集された稚魚はほぼ同所的であったことから(図3)、孵化後一定のサイズ・年齢に達するまで大きな移動回遊を行わない可能性が示唆された。
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日本海産アカムツとの比較:東シナ海産アカムツと日本海産アカムツ(島根県沖で採集)のmtDNAの調節領域を9種類の4塩基対認識制限酵素で切断したところ、東シナ海産からは多型が検出されなかったのに対し、日本海産からはAcc IIおよびHha Iの2酵素から多型が検出された(図4, 5)。このことより島根県沖のアカムツは、日本海系群のアカムツと、対馬暖流経由で日本海に入った東シナ海系群のアカムツの2系群が混在している可能性が示唆された。
図1.アカムツ
図2.採集地点 ●:陸棚の調査点、●:斜面域の調査点
図3.幼稚魚の採集地点 ●:幼魚(30mm以上)の採集地点、▲:稚魚(10mm以下)の採集地点
図4.多型が検出された制限酵素切断型 M:マーカー
図5.Haplotypeの出現頻度 日本海におけるB型の出現頻度はAcc IIで42.8%;Hha Iで27.2%
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