水産生物データの高速クロス集計プログラムの開発
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[要約]
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行×列の形式でデータを集計するプログラムを試作した。本プログラムによって、水産生物の個体数や体長などのデータをもとに、水産研究に特有の統計値(成長曲線パラメータや多様度指数など)をすばやく計算できる。
西海区水産研究所石垣支所沿岸資源研究室
[連絡先] 0980-88-2866
[推進会議(専門特別部会)] 西海ブロック
[専門] 計測・調査法
[対象] 魚類
[分類] 研究
[水産研究技術開発戦略該当項目] 1(1)水産資源の生物特性の解明
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[背景・ねらい]
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水産研究の多くの場面で、対象生物の体長や個体数などの変数が魚種や季節などの項目の組み合わせごとに分類され、平均値などの統計値が行×列の形式で出力される(「クロス集計」)。しかし、既存のアプリケーションソフトでは、クロス集計の可能な統計値は平均値や分散などの一般的な値に限られており、水産生物の研究に必要な統計値は含まれていない。そこで、本プログラムでは、成長曲線のパラメータなど、水産生物研究に必須の統計値を集計できるようにした。
[成果の内容・特徴]
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プログラミング言語:Excel VBA
- 使用法:まず、表計算ソフト「エクセル」の各行に実験・観察条件と測定値とを入力する(図1)。つぎに、本プログラムを起動してこの入力値を読み込み、行・列項目、集計対象、集計方法を選ぶ(図2)。最後に、エクセルのシート上にクロス表を出力する(図3)。
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集計できる変数の個数:1ないし2個。
- 1個の変数について集計できる値:変数を生物種それぞれの個体数とみなした統計値(例:シンプソンの多様度指数)や、特定種の一連の個体数とみなした統計値(例:森下の集中度指数)を集計できる(表1)。また、研究者が独自にエクセルの演算子や関数を組み合わせて、統計値を集計することも可能である。なお、平均値、合計値、中央値などの一般的な統計値も集計できる。
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2個の変数について集計できる値:2変数を種それぞれの個体数とみなした統計値(例:ブレイカーティスの種組成類似度指数)や、一方を齢、他方を体サイズとみなした統計値(例:ベルタランフィの成長曲線の各パラメータ)を集計できる。また、上と同じく、研究者独自の統計値や一般的な統計値も集計できる。
[成果の活用面・留意点]
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活用面:水産研究に欠かせない統計値をすばやくクロス集計したい場合に、本プログラムは有効である。とくに、多くの要因の組み合わさった実験観察データを、少ない労力でクロス集計したい状況(例:多魚種・多漁法を対象にした亜熱帯の水産資源研究)において、本プログラムは役立つ。
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留意点:今後、本プログラムをさらに使いやすくし、集計可能な水産生物の統計値を増やす必要がある。
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[具体的データ]
- 図1 データの入力と選択
一例として「魚種、性、海域、漁法の別に、齢と体長を集計し、ベルタランフィの成長曲線の成長係数Kを求める」という作業の手順を各図で示す。
図2 変数の振り分け
行項目に魚種と性を、列項目に海域と漁法を、集計対象に年齢と体長を選んでいる。
図3 クロス表の出力
魚種、性、海域、漁法の別に成長係数Kを集計している。たとえば、種01のオスの、深場における潜水採集個体は、0.114の成長係数を示している。
表1 集計可能な統計値
[その他]
研究課題名:南西諸島周辺海域産フエフキダイ類の資源構造の把握
研究期間 :平成16年度
予算区分 :一般研究費
研究担当者:栗原 健夫
発表論文等:
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