幼生放流による造礁サンゴ類の加入促進
林原 毅1)・加藤 雅也1)・玉城 泉也1)・清水 弘文2)・鈴木 豪3)・服田 昌之4)・岩尾 研二5)・谷口 洋基5)・大森 信5)
(1)石垣支所資源増殖研究室・2)中央水産研究所・3)京都大学・4)お茶の水女子大学・5)阿嘉島臨海研究所)
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[成果の概要]
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近年、さまざまな要因によって荒廃の一途をたどっている造礁サンゴ群集の再生を目指して、造礁サンゴ類の有性生殖を利用した修復技術を検討している。その一環として、海域に大量の幼生を放流することによって着生・加入を増大させられることを、野外実験によって実証した。
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[背景・ねらい]
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従来、サンゴ群集を積極的に回復させる試みとしては、サンゴ断片の移植という方法が検討されてきた。しかし、潜水を伴う手作業のために多大な労力を必要とし、修復面積も小規模にならざるを得ない。そこで、広範囲に実施できる手法として、造礁サンゴ類の有性生殖を利用した修復技術の開発に取り組んでいる。対象としているのは造礁サンゴ群集の主要な構成群でありながら白化現象やオニヒトデ等の被害を受けやすいミドリイシ属サンゴで、他のサンゴ類に比べて成長が早く、また多くの種が同調して産卵するため大量の受精卵を一度に得られるという利点がある。実験室レベルでは、採卵、人工授精、幼生までの飼育、人工基盤への着生促進などの技術が確立しているが、野外で大規模に実施するためには、幼生放流によって加入を増大させることができるかを検証し、問題点の抽出や対策の構築が不可欠であることから、ミドリイシ類の産卵期に合わせて実証試験を行った。
[成果の内容]
- 幼生放流実験は平成16年5月に石垣島で、6月に阿嘉島で実施した(表1)。
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実験に先立ち、1つの実験サイトに3基の試験礁を設置し、それぞれに10センチ角の着生基盤を64枚取り付けた(阿嘉島では放流直前に基盤の取り付け方を変更した)。
- 3基の試験礁のうち、1基には幼生をそのまま放流し、もう1基には幼生が流れ去らないようにテントを被せてその中に同数の幼生を放流し、残る1基には何も放流しなかった(写真1)。これらの着生数の比較から放流の効果を検討した。
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放流後48〜64時間後に着生基盤を回収し、基盤上のミドリイシ類と思われる初期ポリプを全て数えた。
- 石垣島では、試験礁間での差はなく、着生していたのは天然幼生の加入が主であると判断された。一方、阿嘉島では明らかに放流の効果が認められ、そのまま放流した場合にも加入を増やせることが実証された(図1)。
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[具体的データ]
- 写真1 阿嘉島における幼生放流実験の様子
表1 幼生放流野外実験のデータ
図1 石垣島および阿嘉島における幼生放流実験の結果
それぞれの実験区(試験礁)の全64枚の基盤を回収し、実体顕微鏡下でミドリイシ類の初期ポリプを全てカウントした。
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