八代海の干潟と藻場のGISデータベースの構築
木元 克則
(海区水産業研究部有明海・八代海漁場環境研究科)
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[成果の概要]
- 八代海全域の干潟と藻場の航空写真撮影と詳細な現地調査を実施した。干潟と藻場の分布についての本調査結果と過去の同様な調査結果を地理情報システム(GIS)上に取りまとめ、八代海の干潟と藻場のGISデータベースを作成した。
- このデータベースにより干潟と藻場について4半世紀の変化と現状が明らかになった。
[背景・ねらい]
- 有明海・八代海の再生を図るため漁場環境の実態を詳細に把握する。
- 八代海では1977〜1978年に西海区水産研究所及び熊本・鹿児島両県の水産試験場により「九州西岸海域藻場・干潟分布調査」が実施されたが、近年は全域に亘る詳細な現地調査が行われず、干潟と藻場の変化の実態が不明。
- 八代海の干潟と藻場の環境と生物の情報の総合的整理が不十分。
- 行政及び研究機関が利用可能な地理情報システム(GIS)上のデータベースを作成して今後の研究と施策に活用する。
[成果の内容]
- 2003〜2005年の3か年に亘り、八代海全域の航空写真撮影(図1)と詳細な現地調査を実施し、干潟と藻場の分布範囲を確定した(図2)。
- 八代海を8つの海域に区分し(図3)、干潟と藻場の分布と面積を算出して既往の資料と比較した。
- 干潟は八代海東岸北部で減少し、八代海全域の合計で1977〜1978年調査時の86%に減少していた(図4)
- アマモ場は全域で減少し、八代海全域の合計で1977〜1978年調査時の65%に減少していた。ただし、八代海東岸北部では、以前に分布していたアマモが消失した代わりにコアマモが疎らに分布し、アマモ場の面積は増大していた(図5)。
- 干潟の分布、干潟の底質・底生生物、藻場の分布、海藻草の植生と被度等の本調査結果、及び既往の調査結果をGISデータベースに搭載し、「八代海域干潟・藻場環境データベース」を作成した(図6)。
- [成果の利活用・普及・問題点等]
- 本データベースにより八代海全域における干潟と藻場の分布の現状と、過去からの変化の詳細を把握することができる。
- 今後、関係機関と本データベースを共有し、関係調査の結果を追加して更新する計画である。このことにより、環境と生物情報を総合的に評価し、干潟及び藻場の生物生産機構の解明、再生、管理、水産資源の培養のための基礎資料として活用することが期待される。
- 本調査結果及びデータベースの資料は(社)日本水産資源保護協会のホームページ「有明海等環境情報・研究ネットワーク」(http://ay.fish-jfrca.jp/ariake/index.asp)において順次公表されている。
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- [具体的データ]
- 図1.球磨川河口域干潟の航空写真(2004年撮影)
図2.球磨川河口域の干潟とアマモ場の分布
図3.八代海の海域区分
図4.八代海の干潟面積の変化
- 図5.八代海のアマモ場面積の変化(天草諸島南部は鹿児島県海域を除く)
- 図6.GISデータベースによる干潟とアマモ場の分布表示例
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