九州南方〜台湾東方海域における中規模の海洋構造


[要約]
クロマグロの産卵場である琉球列島周辺海域において、西海水研所属の陽光丸(499トン)、係留系、定期フェリーボート等を用いて調査を行い、同海域における中規模の海洋構造を明らかにした。
西海区水産研究所・海洋環境部・海洋動態研究室
        [連絡先]  095−822−8158
        [推進会議]  西海ブロック  
        [専門]  海洋構造 
        [対象]  まぐろ 
        [分類]  研究

[背景・ねらい]
台湾東方から九州南方海域の海洋構造の変動は、近年社会的関心が高いマグロ類等の外洋性魚類の卵・稚仔魚の輸送に大きな影響を及ぼす。一方、本州南岸における黒潮大蛇行の前駆的現象も九州南方海域で生じると考えられている。しかし、この海域は本州南岸に比べて観測網が粗く、変動の実態は不明である。そこで、フェリーボートとGPS(汎地球測位システム)及びADCPを利用した海流モニタリングシステムの導入や漂流ブイ、係留系、調査船等を用いての多面的な調査を基に、黒潮源流域における海況の短期変動の実態を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 沖縄島西側で黒潮反流の存在を確認した。また、黒潮反流が生物分布に大きな影響を及ぼした。
  2. 沖縄島東側の年間平均流は、沖縄島よりでは北東流、南北大東島よりでは南西流を示す。また、直径200km程度の時計回りの渦が、数cm/secの速度で西方へ移動する。
  3. 沖縄本島の南に位置する慶良間海裂では、中・深層には北西方向に安定した流れが存在し、北太平洋から東シナ海へと、北太平洋中層水が相当量流入している。その流速及び流量は、それぞれ約20cm/secと約3Sv(Sv=106m3/sec)である。
  4. 石垣島と台湾間から東シナ海へ流入する黒潮の流軸位置は、約30日周期で東西移動する。また、与那国島周辺の北太平洋中層水の流速は約4.5cm/sec、流量は約0.6Svであり、慶良間海裂からの流入量に比べてかなり少量である。
[成果の活用面・留意点]
クロマグロ等外洋性魚類の資源管理のための基礎資料:卵・稚仔の輸送拡散に関わる流動環境を把握し、初期減耗との関連を解明する。
黒潮の離接岸変動予測のための基礎資料:黒潮源流域における黒潮流軸位置と中層水の東シナ海への流入量をモニターし、九州南方〜本州南方海域の黒潮変動予測のための基礎資料とする。
 
    
[具体的データ]
 図1.稚魚ネットによる生物採集結果
 図2.10m深でのADCP測流結果  
 図3.沖縄本島東方での平均的流況
 図4.慶良間海裂における水深530mでの係留系測流結果

[その他] 
 
研究課題名 九州南方〜台湾東方海域における中規模の海洋構造
予算区分 海洋開発促進費
研究期間 平成5〜11年
研究担当者 中川倫寿・森永健司
発表論文等 台湾北東陸棚域における海流構造、日海洋学会講要、1997.8.4 
Process of the Tsushima Current formation revealed by AOCP measurements in summer、日海洋誌、52,1997.8.8 
4往復ADCP測流から得られた新しい対馬暖流域、日海洋学会講要,1997.8.9 
    
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