石垣島宮良川からの赤土流出

阿部和雄・岡慎一郎・西濱士郎

(西海区水産研究所石垣支所海洋環境研究室)

〔成果の概要〕
石垣島内の宮良川における赤土の流出状況を調査した結果、赤土粒子は降雨後に畑地等から河川を通して沿岸域へと流出、一度干潟域等に堆積し、特に台風等により沿岸域がかく乱されたり、沖へ向かう大きな流れが生じた時に沖合へと流出することが判明した。
〔背景・ねらい〕

沖縄県では近年の土地造成等の開発の結果、土壌が露呈するようになり、これらは降雨後に水路や河川を通して沿岸海域へ流出し、いわゆる「赤土」として社会問題となっている。これらの赤土流出による沿岸海域での生態系への影響が懸念されているが、沿岸漁業被害の防止という観点からも流出防止等の対策が急がれている。宮良川は石垣島を南北に流れる県下第4位の流域面積(35.40km)をもった総延長12,000mの2級河川であり、かんがい農業の確立を図るために、受益面積3,460haを対象とした水利事業や土地改良事業が行われてきた。そこで宮良川における赤土流出状況を把握する目的で、河川及び河口域から沖合への赤土流出の実態を調査した。

〔成果の内容〕
  1. 河川により沿岸域へ運ばれた赤土は一度その場に堆積する。宮良川河口の干潟域の3地点(図1)における表層堆積物中の赤土濃度の1997年における変動を図2に示した。堆積した赤土は降雨後に河川を通して干潟域へと運ばれたものと考えられ、水がよどみやすい地点Aで高濃度を示す傾向がある。7月から8月の調査で濃度に大きな差があるが、これは台風によって激しく沿岸海域がかく乱され堆積していた赤土が沖合へ流出したものと考えられる。
  2. リーフの水道部(図1)に濁度計付きの流速計を設置して、1999年8月から9月の沖合域への流出状況を見積もった。濁度と流速を掛け合わせて赤土粒子の輸送量とし、その絶対量を図3に示した。流出量は日によって大きく変動を示し、2桁程度の違いが観測された。大きな流出量が観測された時には河口域でおおむね南西方向に大きな流れが生じており、赤土粒子が沖合域へと輸送されたものと考えられる。また、調査期間中の流出量の平均値は17.6μg/cm・sであったが、8月21日及び23日を除くと2.9μg/cm・s程度であり、通常は殆ど流出していなかったものと考えられる。
  3. このように赤土粒子は特に降雨後に沿岸域へ輸送され、一度堆積した後に大風など天候の悪化等による沿岸域のかく乱や原因は明らかではないが、沖へ向かう大きな流れが生じた時に沖合域へと流出することが判明した。 (図2図3)                         
目次へ戻る