画像解析による銘柄別体長組成推定の試み
- [要約]
- 水揚物に直接触れないで銘柄別体長組成を得ることが可能な非接触計測法についての使用調査機材別、生物種類別の測定誤差の検証を行ない、以西底びき網を例として作業能率等を検討した。
西海区水産研究所・東シナ海漁業資源部・資源評価研究室
[連絡先] 095−833−2686
[推進会議] 西海ブロック
[専門] 資源評価
[対象] 魚類
[分類] 普及
- [背景・ねらい]
- 漁業情報に基づき対象種の資源評価を行うに当たっては、水揚物の銘柄別体長組成が重要な情報となる。しかし、市場に出向き、1個体づつ体長を計測することは多大な作業量を要する上、特に高級魚では魚体に触れること自体が市場関係者に忌避されることも多い。今回は、(1)短時間で多数の標本が測定可能、(2)標本の購入が必要でない、(3)水揚物に直接触れないので市場側の調査協力が得易い等の長所を持つ非接触計測法についての使用調査機材別、生物種類別の測定誤差を検証した。
[成果の内容・特徴]
- これまでの非接触計測法調査の機材には35mm1眼レフカメラ(銀塩フィルム式)が使用されており、画像の取得からパソコンへの入力までに1〜2日必要であった。これに対して、フィルムの現像が不要な高画質型デジタルカメラを用いれば、画像をパソコンへ直接入力することが可能となるため作業効率が上がる(図1)。その他にもデジタルカメラは従来の35mm1眼レフカメラに比べ以下の有利な特徴を持つ。
(1)感度が随意に1枚単位で変更可能であるため照度が低い状況となっても絞り値・シャッタースピードが不変のまま感度を上げて撮影を行なうことが出来る(カラーフィルムは、現像時に1本単位でしか感度の変更(増感現像処理)が出来ない。
(2)撮影時、日付・時刻、露出値、焦点距離等の情報を自動的に記録するため画像整理が容易である。
(3)大容量記録メディアを使用することにより多くのデータを収録して調査することが可能である(64MBの記録メディアで約120枚)。
(4)画像情報を半永久的に保存できる (カラーフィルムは通常10年間が限界)。
- デジタルカメラにより取得された画像による解析値の分散は、35mm1眼レフカメラの画像を用いた時の分散とほぼ同等の値である(1600×1200の画素で撮影した場合)。
- 1層で魚函に整列されているほとんどの水揚物に対して本法の適用が可能(図2)。
- 最低1名の人員で調査を行なえ、1人の場合には1時間あたり
30〜100箱調査できる。撮影されたデータの解析に必要な時間は1画像当たり
100尾で2〜5分である。
- [成果の活用面・留意点]
- 非接触計測法により、これまで人的、経済的な制約から銘柄別体長組成調査が困難であった対象について迅速かつ大量に調査が可能となる。さらに、画像を記録するので種の確認や測定部位の追加、再測定に柔軟に対応できる。ただし、内容物の重なりが大きいものには不適当であるし、水揚物の魚函への並べ方等は各市場によって異なるのでそれぞれの状況に合わせた測定方法の確立が必要となる。
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[具体的データ]
図1 銀塩式カメラとデジタルカメラの画像比較
左:35mm一眼レフカメラ(銀塩式カメラ)
右:デジタルカメラ(一般用200万画素クラス)
厳密に観察すると右の細部がややぼやけるが解析にさほど影響しない。このように一般用デジタルカメラを用いても銀塩式カメラと遜色無い画像が取得可能である。
図2 測定部位の探索
平面写真からは角度未知の線分の長さは正確には計測できない。しかし、この水平からのづれが±10度以内であれば誤差は2%以内となる。水揚物は図1のように完成した製品として、魚函にきちんと並べられて競りにかかる。魚種・市場により並べ方が異なる。
[その他]研究課題名:市場調査における非接触測定法による体長測定精度の検討
予算区分:経常研究
研究期間:平成11年度
研究担当者:山本圭介
発表論文等:画像解析による銘柄別体長組成推定の試み(以西底びき網漁業),平成11年度日本水産学会秋季大会講演要旨集,1999.
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