付表2                                      
 16年度粘質状浮遊物分析結果と15年度との対比    
                 
                       西海ブロック水産業関係試験研究推進会議有明海・八代海特別研究部会
16年度分析結果(下線を付けた結果は、比較的混じりけの少ない浮遊物を分析した結果)        15 年 度 分 析 結 果 
@外観等
 
 黄褐色、無臭、小さな衝撃で簡単に分散、1mを超す長いものもある(5/8 島原のサンプル)     水分が大半(95%程度)、灰分のほか、糖質やタンパク質も多く含まれており、有機物が主体であると考えられた。
A定性分析






 糖類
 酸に一部溶解・懸濁、アルカリでは変化なし
 酸で膨潤し、アルカリで変化なし(長洲沖、宇土半島西沖サンプル)。他の海域で採集したサンプルには、「酸で変化なくアルカリで膨潤する」、「両者ともに変化なし」のものもあった。
 


 中性糖・ウロン酸・アミノ糖は、サンプル1g当たり1000分の1〜2g含まれていた。昨年の分析結果と同傾向。シアル酸は検出されず、動物性・植物性の判断は困難。
 酸に少し溶けるがアルカリに溶けにくい、特異的な性状が見られた。この性質は、海藻類やプランクトンなどを含む植物由来の粘質物にはみられず、ウナギなどを始めとした魚類体表の粘質物にも見られない特異的な性状


 抽出物等の分析では数種の糖類が確認され、生物由来の物質であることが確認できた。夾雑物(プランクトン等)の影響で植物由来の糖質等も確認されたが、主体は、動物由来のものであろうと判断された。
B色素
 
 巻き込まれたものとの区別困難なため、分析に供せず。   
 
 植物由来の光合成色素が確認できたが、二次的に付着していた植物プランクトン由来の可能性が大きい。
C金属元素類
 
 カルシウムは底泥が混じるに従って増加する傾向にあるが、比較的混じりけの少ない浮遊物からはほとんど検出されず(湿重1グラム当たり0.6μg)。   通常海域の範囲以内であった。

 
D元素・鉱物  巻き込まれたものとの区別困難なため、分析に供せず。   
    
 付着していた底泥由来と思われる元素・鉱物が多く検出されたが、石灰の存在をうかがわせるような結果は得られず。
E一般細菌

 
 非運動性の桿菌をはじめいろいろな細菌が分離された。浮遊物に特異的な細菌は観察されず。
 DAPI染色で陰性、浮遊物自身は細胞で構成されていない。
 生存数から判断して、粘質状物質が細菌のコロニーである可能性は考えられなかった。
 
F安定同位体比   昨年の分析結果を他のデータと比較・解析したところ、粘質状浮遊物の安定同位体比とタマシキゴカイ卵嚢塊の安定同位体比にはかなり差があり、粘質状浮遊物は有明海の懸濁物や堆積物に近い値を示していることが明らかとなった。  福岡県・長崎県地先で浮遊していた粘質状物質は、海底堆積物起源ではなく海洋生物起源と推定された。また、佐賀県有明干拓の排水門近くで採取された粘質状物質には、陸起源の懸濁物が多く付着していた。
Gプランクトン  夜光虫・繊毛虫、タラシオシーラ属など11種の珪藻  2次的に付着したと思われる多くの動物・植物プランクトンが観察された。多毛類の卵も観察された。 
Hその他




 
 海底から採集されたビロードマクラ(二枚貝)を飼育してストレスを与えたが、粘質状物質は分泌されなかった。
 島原半島北部沿岸の底質から採集された多毛類に、多量に生息する種は発見できず(スピオ科、ツバサゴカイ科、フサゴカイ科からそれぞれ1種が同定された。長洲沖のベントスも同様)。
 
 タマシキゴカイの卵嚢塊・腹足類のものと思われる卵嚢塊を酸・アルカリ処理したところ、酸に少し溶けるがアルカリに溶けにくい性状を示した。
 有明海中央部の広範囲から、大型のゴカイ類のものと思われる棲管が多数確認された。

 

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