平成20年度西海区水産研究所運営会議報告書
 
                                        会議責任者   西海区水産研究所長
 
1 開催日時・場所: 平成21年3月17日
              西海区水産研究所中大会議室(長崎市)
 
2 参加者および人数: 17名
外部委員 5名
  岸川 康幸(長崎魚市株式会社取締役)
  河西  宏(株式会社長崎経済研究所代表取締役)
  田嶋  猛(太平洋貿易株式会社代表取締役社長)
  脇山 順子(長崎県男女共同参画審議会会長)
  池口啓一郎(長崎県立長崎鶴洋高等学校教諭)
西海区水産研究所 12名
  所長、業務推進部長、東シナ海漁業資源部長、東シナ海海洋環境部長、海区水産業研究部長
  石垣支所長、陽光丸船長、業務管理課長、有明海・八代海 漁場環境研究センター長
   《事務局》 業務推進課長、企画調整係長、情報係長
 

3 結果の概要

議題
結果の概要
開会 ・座長の業務推進部長から開会の宣言があった。
1.挨拶 ・所長が外部委員に対して出席への感謝と忌憚のないご意見の要請を行った。
2.出席者紹介 ・業務推進部長から出席者の紹介があった。
3.西海区水産研究所の概要 ・所長から資料及びパワーポイントを用いて西海区水産研究所の概要説明があった。
4.平成20年度西海区水産研究所の各研究部の研究成果  
(1)東シナ海漁業資源部
(2)東シナ海海洋環境部

・東シナ海漁業資源部長及び東シナ海海洋環境部長からパワーポイントを使用して担当部の研究成果の説明があった。

質問: サバ類の価格については、用途が変わったために、小型化しても高価になった例もある。今後、脂の乗り等大きさ以 外の要因も考慮してほしい。
回答: 貴重なご助言として受け止めたい。
質問:サバの調査で中国での70カ所以上もの卸売市場の調査をどのようにして行ったのか。
回答:本人が中国語に堪能でかつ中国の研究所や大学に人脈があり、それを利用して調査を行った。
質問:漁獲の強さFとは具体的にはどういうことか。
回答:漁獲の強さを指数関数で表したものである。マサバに対する漁獲率は高く、資源水準は低い。漁獲圧を下げた方が良いが、それより小型魚を獲らない方が効果が期待できる。漁獲率を下げるより、小型魚を獲らない方が対応が簡単で現実的な提案であると言える。現在はマサバ1魚種であるが、将来的には他魚種も併せこのような獲り方をするとより儲かるというような提案を行いたい。
質問:休漁期を設けた結果、漁獲量が多くなった例があるが同じ様な事か。
回答:休漁により漁獲努力量が減ったということであり同様な(Fを下げる)例と考えられる。
質問:マサバの方がゴマサバより漁獲が多いのは値段によるものか。
回答:そう思う。ただ、餌などに使用する場合はどちらでも効果は変わらない。資源状態はゴマサバの方が良いので、この場合はゴマサバを使用した方が良い。マサバは大きくしてから獲れば値段が高くなるのでその方が儲かる。
質問:長江の三峡ダム建設、筑後川の大堰などにより生物環境に影響が出るとのことだが、例えば環境省へ調査結果の情報提供を行うなどのフィードバックを行っているか。
回答:来年度から国立環境研と長江からの陸起源物質の流入について共同研究を行うことになっている。陸上部分は国立環境研、西水研は海の部分を担当する予定である。一方、有明海でもダムの影響等の調査は実施していて、毎年関連会議等を通じて情報提供している。

(3)海区水産業研究部
(4)石垣支所
・海区水産業研究部長及び石垣支所長からパワーポイントを使用して担当部、支所の研究成果の説明があった。

質問:漁場の回復作業とは具体的に何をやっているのか。
回答:地域により異なるが、その海域の環境で適した海藻を増やす研究開発等を行っている。技術会議予算で各県と実施している研究例では、魚による海藻の食害を防ぎ、ウニの実入りを回復させる取組を実施しているが、実証段階には達していない。
質問:二枚貝の死亡の原因は硫化水素でその発生原因は貧酸素水塊とのことだが、それでは貧酸素水塊の発生原因は何か。
回答:夏は海の水が成層化するため、下層は酸素を使う有機物の分解などにより酸素が不足する。硫化水素は酸素が無い状態で持続するため、夏場はかなり厳しい状況になっていると言える。有機物を食べる二枚貝が減り、さらに有機物が増え分解に酸素が消費されるという悪循環に陥っている。
質問:南方系の海藻の増加に対応してい、ウニの実入りを増やす取組を行っているとの話であったが、ウニも磯焼けの原因の一つと聞いた。海藻とウニの共存は可能なのか。
回答:ウニが過剰に増えると影響が出てくる。南方系の海藻に変化するとアワビやイセエビへの影響が大きい。南方系の海藻の増加自体は人間の力では変えることは困難であるが、それへの適応策の一つとしてウニが活用できないかということである。
質問:アサクサノリは味が良いが養殖が難しいとのことであるが、オオバアサクサノリは簡単に養殖できるのか。
回答:オオバアサクサノリはアサクサノリより成長が早く、現在養殖が盛んに行われているスサビノリより味が良いなど、アサクサノリより良い面も持ちつつ、アサクサノリより養殖しやすいという利点がある。
質問:将来オオバアサクサノリの養殖ができた時に、その種を海外に持ち出されないために研究しているということか。
回答:品種判別の技術は海外持ち出し等の抑止力になると考えている。
質問:南方系の海藻で形成された春藻場にはイセエビが戻りにくいということだが、南方系海藻が増えるところにプランクトンが増え、それを食べに南方系の魚が集まってくるという様な調査は行っているか。
回答:潜水調査が中心であるため、プランクトンの調査までは行っていない。
質問:南方系の海藻が増え、そのため南方系の魚が増えたのではないかと思う。海の中の生態系が変わって、シロクラベラなどの南方系の魚に切り替わるのであれば、消費者もそのように対応できるのではないか。
回答:そのような話をしていただきありがたい。温暖化への対応については、センター内の監事からも、関連する示唆を受けた。温暖化により生態系が変わるのであれば、石垣支所は、これから本土で起こる現象の予知等に適した立地条件であると考えられる。このように支所の研究も九州の漁業にリンクしている。また、石垣支所で行っているタイマイの養殖研究は長崎のべっ甲産業にも貢献することになる。
(5)業務推進部 ・業務推進部長から業務推進部の主要な成果をパワーポイントにより説明があった。

質問:サイエンスキャンプは夏休みに行われたのか。
回答:夏休み、冬休み、春休みに行われるもので、今回は冬休みに行った。魚市場へも見学させていただいた。
質問:募集等はどのように行われているのか。
回答:文部科学省が予算を支出しており、サイエンスキャンプのホームページで募集して、応募した全国の高校生から10名を選んで行った。長崎鶴洋高校からも1名参加した。
5.平成20年度の西海区水産研究所の運営報告

・平成20年度の運営報告を業務推進部長が報告された。

質問:委託費(その他)の予算のうち以西再生に関する調査が約8千万とすると、それを除くと前年よりかなり減っていると理解して良いか。
回答:以西再生調査のうち用船については本部で行っており、この数字には含まれていない。それを除くとほぼ前年並みと思われる。
質問:施設整備の予算は隔年か。代船建造の費用はどうか。
回答:施設整備の予算は隔年に予算が認められているが、あくまで結果である。なお、来年度は今年に続き石垣支所の要求が認められるのではないかと考えている。また、代船建造は総額約53億であるが、本部の予算となり、この数字には含まれていない。
質問:標本管理室の新設の予算はどこにあるのか。
回答:施設自体は多以良町移転当時からあり、今年度新しい組織を立ち上げて標本の整備を行ったということである。そのため、施設整備の予算には含まれていない。

業務推進部長が、前年度の指摘事項への対応を以下のように口頭で説明した。
◎高校のマダイヒラメ放流の追跡調査への協力そのものは行わなかったが、サイエンスキャンプの実施等、高校生に技術指導を行うような方向で活動していることはご理解いただけると思う。見学等への幅広の対応についても同様である。以西底曳網漁業再生への取り組みについては今年度は特に力を入れて取り組んできた。来年度も同様に取り組む予定である。温暖化対策に30万しか予算がないとの指摘は、あくまでも所長裁量の研究予算の中の話であり、所全体としては、例えば温暖化対策事業では約1千万の予算が使われている。

質問:以西底曳網漁業の再生の関係は重要で是非やっていただきたい。未利用漁場調査での見かけない魚の中にはおいしい魚も含まれると思う。この関連のPR用予算はどうなっているのか。
回答:県や市の方でPR用の予算を組んでもらっている。来年度は未利用漁場でも経営が成り立つような操業方法などに焦点を当ててやっていく。県や市では獲れた魚の成分分析を行いPRしていく予定もある。3月24日に推進協議会を開催し、年度末に活動を総括して市長に報告する予定である。

質問:市場の関係者はプロの目から見た判断により、未利用漁場調査については既にさめた感がある。メディアなどでは派手にPRしていただいたが、今年の調査に限っては、良い所より悪い所がはっきりしたと思っている。
回答:プロの目からの大変厳しい意見をいただいたが、最初からあきらめれば、以西底曳網漁業再生はできない。長崎の消費者は保守的な面があるので、魚価の向上は簡単でないが、魚を提供し続ければ、目にも付くようになるのではないかと考えている。今後も流通のプロとしてご助言をお願いしたい。
質問:先ほど名前が出ていたアカムツなどは全国的に高級魚ではないのか。
回答:長崎は保守的な面があり、ヨロイイタチウオなども含め、すでに他県で流通している魚でも、昔から獲れていなければ知名度が低いという問題がある。

6.外部委員の講評

池口委員:本校では毎年6月に実験等も含め施設見学等をさせていただいている。県水試には藻場回復の取り組みを指導していただいており、ウニを獲って藻場の回復を観察するような体験学習を行っている。このような地域との技術指導も含めた連携について今後も計画していただきたい。
田嶋委員:今回で3回目の出席になるが、具体的な成果が増えてきた印象を受けた。タイラギの関係では長崎水試と田崎真珠と共同でやっている研究の記事を福岡でもよく見かけた。魚の養殖の関係で魚価が安く死活問題となっている。以西底曳き網再生のところでも魚価に少し触れられたが、水研センターとして、養殖魚も含めて魚価の問題について踏み込んだ取り組みを行ってもらえないか。
河西委員:初めて参加したが、生態や環境や価格といった幅広なアプローチを行っており、運営について評価は高いと感じた。一方温暖化などの海洋環境の変化は素人でも既に感じることができるほどの緊急性がある。経済効果の大きさやスピードをさらに重視して研究に取り組んでいくとより良い研究につながるのではないかと思う。
岸川委員:以西底曳網再生の件では厳しいことも言ったが、期待すればこそである。昔長崎大学等で教わったこともあり、この会議には親近感を持って委員として出席させていただいている。東シナ海あっての西海区水産研究所である。民間から言えば結果が金になることを期待している。利益が出て実際に役に立つ研究は難しいと思うが、大学とは違う研究をやって欲しい。タイラギやタイマイではもう目の前に来ている印象である。イセエビにしてもしかりである。今後とも基礎研究も続けながら民間業者等の利益に直結するような経済効果の見込める研究をしていただきたい。
脇山委員:予算の中で委託費などの競争的資金が74%を占めることから、外部からの期待も大きく大変だと思う。以西再生の件では厳しい発言もあったが長崎の食文化を考えた場合、どんな魚でも食べることができると思われるので、獲れるものは獲ってくるようなスタンスで進めていただき、長崎の食文化を豊かにする後押しをして欲しい。

所長:経済効果まで持って行かないと意味がないとのお話しをいただいた。私が在籍した養殖研では最初は基礎研究ばかりやっていたが、それでも水研センターになってだいぶ変わってきた。西水研は他の水研より現場を良く見ながらやっている姿勢がうかがえるので、期待できると感じている。以西再生の話で厳しい発言があったが、ゆっくりだが解決に向け動いている。厳しいご意見をいただけばさらに進むと思うので 有意義である。私自身民間等の役に立ったと思える研究はな かなかできず、最後になって、ようやく餌料関係の機械を開発できた。西海水研の研究成果の民間への還元についても、今しばらく猶予が欲しい。

閉会

閉会に先立ち、業務推進部長が、昨年度の脇山委員からのご指摘(女性研究者の増加)に関連し、研究開発力強化法の施行により、センター全体としては女性の研究者を増やす取り組みを行う方向にあることを紹介した。
業務推進部長が閉会した。

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