平成21年度西海区水産研究所運営会議報告書
 
                                        会議責任者   西海区水産研究所長
 
1 開催日時・場所: 平成22年3月16日(火) 14:30〜17:30
              西海区水産研究所 中会議室(長崎市)
 
2 参加者および人数: 17名
外 部 委 員 6名
  山口 敦子(長崎大学水産学部海洋資源動態科学講座海洋動物学研究室准教授)
  岸川 康幸(長崎魚市株式会社常務取締役)
  河西  宏(株式会社長崎経済研究所専務取締役)
  田嶋  猛(太平洋貿易株式会社代表取締役社長)
  脇山 順子(長崎県男女共同参画審議会会長)
  池口啓一郎(長崎県立長崎鶴洋高等学校教諭)
西海区水産研究所 11名

  所長、業務推進部長、東シナ海漁業資源部長、東シナ海海洋環境部長、海区水産業研究部長
  石垣支所長、陽光丸船長、業務管理課長、有明海・八代海 漁場環境研究センター長

   《事務局》 企画調整係長、情報係長
 

3 結果の概要

議 題
結果の概要
開 会 ・座長の業務推進部長から開会の宣言があった。
1.挨 拶

・所長が、東シナ海、黄海、有明・八代海、亜熱帯水域の水産資源の安定供給に向けた研究の取組など西水研の行うべきことについて説明し、外部委員に対して当所の運営について改善等の指導要請を行った。

2.出席者紹介 ・昨年度と同じ委員のため、業務推進部長が今年度の異動者について紹介した。
3.西海区水産研究所の概要 ・業務推進部長が資料に基づき当所の概要を説明した。
4.所の運営報告

・所長が資料とスライドにより当所の運営方針及び運営結果(東シナ海効率化事業(以西底曳網)、平成22年度資金獲得に向けた取り組み、国際交流の推進状況など)について説明した。
・船長が陽光丸運航にかかる実績、代船の概要を資料とスライドにより説明した。

5.各部の研究成果

(1)東シナ海漁業資源部
資源部長がスライドにより説明した。
【質 疑】
質問:ゴマサバとマアジは現状で増加するとのことだが、九州西部海域ではアジが獲れにくくなっている。理由は?
回答:確かに九州西部ではアジはあまり獲れていないが日本海では多い。マアジ対馬暖流系群の産卵場は複数に分かれており九州西部などの産卵場に由来する群が減少しているようだ。資源動向要員分析調査を今までは東シナ海南部の産卵場を中心に行ってきたが,今後は全域に広げて研究したい。

質問:現状はあるものを獲ってくる。サバに対する対策がこの点と矛盾しているのではないか。
回答:休漁は困難であるが、資源量が比較的多くなってきた0歳魚の漁獲を控えてもらえれば、状態は回復していくのではないか。日中日韓漁業財団からの委託により現在漁場の探索も行っており、引き続いてサバの資源回復に貢献していきたい。

質問:沿岸の豆アジを獲らないようにしているが、週に1日のみの休漁では効果が上がらない。根本的なことを変えて行かなくてはいけないのでないか。
回答:資源回復計画は漁業者が主体として計画・実施するものと理解している。

質問:網目をかえれば小さな魚を獲らないことができるのか。
回答:網目の種類は多くなく、これによる漁獲サイズの選択は現実的でない。魚群探知機の映像で判断したり、試し釣りをしたりして小さな魚を巻かないようにできるのではないか。

(2)東シナ海海洋環境部
海洋部長がスライドにより説明した。
【質 疑】
質問:大型クラゲの被害を中国、韓国、日本で比較するとどうか。
回答:中国では食料として扱われているので被害はない。日本と韓国を比べると韓国の方が大きな被害を受けている。

質問:中国で赤潮の発生はあるのか。
回答:浙江省沿岸で被害が出ているようだ。

(3)海区水産業研究部
海区部長がスライドにより説明した。
【質 疑】
質問:タイラギを垂下養殖すると成長が速くなるとのことだが、肉質はどうか。
回答:現場で試食会をやったが、天然物と遜色ないとの評価を得 た。

質問:タイラギ養殖のB/C(費用対効果)はどうか。
回答:タイラギの垂下養殖には、夏場の高水温、降雨による塩分低下、干満、付着生物対策など多くの問題が残っている。今は収益を論じる段階ではなく、技術開発と手法の改善を行っていくつもりである。

質問:今年出回っていた佐賀のタイラギは小振りであった。来年は大きくなるのか。
回答:今年は1年貝が漁獲対象であったので、来年はもっと大きいものが店先に並ぶと思われる。

質問:今年夏に有明・八代で発生した赤潮と中国沿岸域の環境問題は関連があるのか。
回答:有明海に種があり、それが増えながら拡大していった。中国との関連はない。

質問:ここ30年間でカキ礁は1/3に減少してしまった。今後30年でさらに大きく減ることはないのか。
回答:カキ礁が小さくなった理由は、ノリ養殖のため人為的に除去したことにある。今後そのようなことがなければ大幅な変化はないと思うが、ナルトビエイの食害は注意が必要であろう。

(4)石 垣 支 所
支所長がスライドにより説明した。
【質 疑】
質問:長崎周辺でスジアラ等南方系のハタ類が獲れるようになってきた。石垣周辺には温暖化の影響は認められないか。
回答:石垣では今まで獲れなかったタマカイ(Giant grouper)が水揚げされるようになった。台湾で養殖しており、そこから逃げ出したものかもしれない。長崎海域で漁獲されるスジアラについては標識放流をして調べる予定である。

(5)全体を通しての質疑
質問:予算が減れば研究にも影響するのか。
回答:研究の重点化は考えて行かざるを得ないであろう。どちらにしても交付金は漸減していき、競争的資金の割合が高まってく る。

質問:研究の柱は漁業被害、環境、増殖にあるようだが、これらの重点化はどのようにしているのか。
回答:水産業の安定化と水産物の安心・安全が中心となるが、温暖化については日本の玄関口がこの海域なので当所が力を入れていく。

質問:水産物の安定供給が危ぶまれているが、漁業現場は水揚げしないと生活できない。研究者は先見性を持って仕事をこなし、その結果を社会に普及していかなければならない。国民からの応援がこれまで以上に必要となってくる。
回答:水産資源の持続的な利用が大きな目標である。地道な作業の積み重ねになるが、現場の漁業者に納得してもらえる管理モデルを提言していきたい。

6.外部委員の講評

・2年ぶりに参加して、全体として研究の進展が認められた。大型クラゲや中国海域のデーター不足など新たな問題も発生しているが、水研にしかできない研究をこれからも進めてほしい。予算面では大学に比べてうらやましい状況である。水研の研究への期待の裏返しでもあろう。全体に現場に対応した取り組みが増えてきているが、モニタリング、基礎研究も大切にしてほしい。 一般の消費者には普段海の研究はなかなか伝わりにくい。一般紙など身近な媒体を使って県民・市民向けに情報提供を心がけてほしい。
・短期間で結果を出すことが求められている。しかし、長期に取り組まなければならない課題、調査・研究の重要性も再度見直し、アピールしていってほしい。
・長崎県の経済は人口の減少で疲弊している。雇用の問題が大きいものの、成果の出る対策が出せないでいた。最近、行政と現場が一対となった取り組みが始まった。一次産業、水産業、教育への対策強化が掲げられ、集中して実施することが提言された。水産業の振興のため、このような取り組みを水産研究所の活動の後押しとして活用していくこともできるのではないか。
・近年産業に直結した研究が増えてきたが、長いスパンで基礎的な研究に取り組むことも忘れないでほしい。中国との関わりもたいへんだろうが、対外的な調査も頑張ってほしい。水研が取りまとめる資源管理の提言にはもう少し拘束力があっても良いと思う。そうしないと、本当の意味で資源を持続的に利活用していくことができないと考えている。
・見学・研修で西海区水産研究所には大変お世話になっている。これからも宜しくお願いしたい。近年若者の、水産業離れが著しく、この点をどうにかしなくてはならない。暗いイメージを払拭するような研究に取り組んでほしい。
所長:現在次期中期計画の中味を検討中であるので、今後この点についてもご意見を伺っていきたい。来年度は新造船もお披露目になる。新たな体制で頑張っていきたい。

閉 会

業務推進部長が閉会した。

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